歴史的事実は、中国が近隣諸国との問題解決を、平和的な交渉よりも、軍事的解決に委ねていることを物語っている。記憶に新しい最近の事実は、南シナ海の南沙群島をめぐる紛争(88年)において、ベトナム及び、フィリッピンが領有を主張する小島を、武力を用いて支配下においたことである。また先に述べた台湾をめぐり中国が実施した軍事演習(96年)である。明らかに「李登輝の総統選出の阻止」を目的としたものであり、ひいては「台湾の独立はたとえ軍事力を行使しても許さない」と言う中国の強い意志を示したものである。
今後、中国が強力な海軍力を保有した場合、「政治的な影響力の行使や紛争解決の手段に躊躇なく使用する恐れがある」ことを念頭に置いて、近隣に位置するわが国は、それを顕在化させない対策をたてる必要がある。
そのため外交努力及び軍事政策・情報の公開や軍事交流を推進し、相互の信頼を醸成することが大切であり、同時に日米安保体制の強化を図るとともに、自ら相応の海上防衛力を保有し、常に練成しておくことである。
(平成9.7.31記)