中国海軍の現状と将来
公開情報からの分析評価と歴史的事実
岡部文雄(元海上幕僚長・海将)
1 はじめに
海軍力の特質は、機動性と柔軟性にある。陸上兵力とは異なり、遠く海を隔てた国々に対して、友好・親善(砲艦外交)から攻撃破壊(パワー・プロゼクション)の段階に至るいろいろの局面で影響力を行使することが出来る。
中国経済の発展はめざましい。それに伴い海軍力の増強・近代化を推進しており、わが国をはじめアジア・太平洋の路国は、「中国は近い将来、強大な海軍力を有し、脅威を及ぼすのではないか」と疑懼し、注目しているところである。一方、中国は国防政策や兵力に関して公表しておらず、厚いベールに包まれており、その実態に迫ることは難しい。それを承知で、公刊論文や各種の資料を参考にして、中国海軍の現状と将来について探ってみたい。
2 中国海軍の現状
(1)兵力
中国海軍は陸上部隊の補助兵力ととて誕生し、その後も沿岸哨戒・防備を主任務とする部隊として発展してきた。また海軍力の建設には多額の費用と先端の科学技術力を要するため、本格的な増強・近代化は、改革・開放政策により経済が急速に発展しはじめ、またロシアの脅威が小さくなった1980年代後半まで待たねばならなかった
「防衛白書」(平成9年)によれば、中国は113.7万トン、970隻を有する世界第3位の海軍国である。ちなみに海上自衛隊は、34.9万トン、160隻であり、中国はトン数にして3.3倍、隻数にして6倍強の大艦隊を保有していることになる。
しかしながらその内容を調査すると(「ジェーンの海軍年鑑」(97〜98)による)、増強・近代化を推進しているものの、兵力構成はアンバランスであり、また旧式艦艇が大部分を占めていることが判る。
・主要水上艦艇(駆逐艦とフリゲート)及び潜水艦は全体の1割強を占めるに過ぎず、ほとんどは哨戒・沿岸戦闘艇と掃海艇及び揚陸艦艇である.
・主要水上艦艇 約60隻 (海自:58隻)
18隻の駆逐艦と36隻のフリゲートからなっている。新型の駆逐艦LUHU