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この定義は不明確なために多くの人の混乱を招きやすいと考える。「民間の」という言葉は海賊行為から固有の船舶を使っての襲撃を除外すると言う意味である。同様に、「個人の目的」と言う言葉は、時には政治的な動機を持つ人で、今は「個人として」行動を起こすのではないような状況を除外するかもしれない。

 

アキレ ラウロ号の後

 

驚く事にアキレ ラウロ号のテロによる襲撃が元で国際条約が出来たのだが、これは海賊問題への対応に当り1982年のUSCLOSよりはるかに優れていた。

 

以前には海上で起きるテロは、海運業界にとって重要な事として真剣に考えられていなかった。陸上での襲撃の方がもっと容易に手がけやすかったので、海上での事件はあまりなかったのだ。しかし、1985年に客船アキレ ラウロ号がテロリストに捕まり、身体の不自由なアメリカ人が撃ち殺されて船外に投げ捨てらると言う事件が起きてから、海上のテロ問題に対する対応が変化した。その事件ではテロリストが投降し、当局との話し合いで達した取り引きによって飛行機でエジプトへ連れて行かれる事になった。しかし、途中でアメリカ空軍によりその行く手を遮られ、イタリアにあるアメリカ軍基地に着陸させられ、この事件はアメリカで裁判に持ち込まれた。

 

アキレ ラウロ号事件が起きている間に国連総会の第6回委員会で国際テロについてが話し合われた。委員会はIMOが国際テロに対する適切な処置法を推薦出来るように調査を依頼した。「海上の航行の安全を脅かす非合法行為」抑止のための国際条約の草案が1987年6月IMO評議会で考究された。1988年3月10日協議会で採択が一致され、条約と議定書に署名されるはこびとなった。これは1988年のローマ国際条約として1992年3月1日から実施されるようになった。

 

この国際条約は国際的な海賊行為という事を念頭において、海上の航行の安全を脅かす非合法行為を加えようと意図したのではなかった。1982年のUNCLOSと違って、この国際条約は罰せられるべき犯罪について述べた上で、それぞれの国家がそれぞれの裁判権を確立すべき義務がある様々なカテゴリーを提示した。それゆえに、これらの犯罪が危険な性格を持つものであると言う事を考慮しながら、それぞれの国がその国の法律にしたがって罰しなければならないのだ。

 

条約と議定書は、力ずくによる船舶の拿捕、乗船している人々に対する暴力行為、船舶に損傷を与えたり、破壊したりする物質を持ち込むと言う様な犯罪の数々を起こす者に対して、確実に適

 

 

 

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