第5章 傾向
被害数は問題の5地域に強調されている。
インドネシア/タイ―1995年の33件から1996年の57件へと、インドネシア海域における襲撃件数の届け出が増加している。これらの事件では賊が船舶に乗り込み、備品や所持品を盗んでいる。タイでは特に著しい増加が見られ、1995年の5件に比べて1996年にはタイの領海で15件の被害が記録された。
ソマリア/ジブチ―この地域においては1994年の1件から1995年の14件まで、海賊に襲われた被害件数が大幅に増加した。そのために船舶がソマリア領海を無事通過できるかどうかは大きな関心事となった。しかしそれ以上に心配されたのは、被害のうちの7件がマシンガンや時には臼砲によって船舶に発砲を受けている事であった。また、1995年にはソマリア領海で武装団による3件の乗っ取りがあった。
これらの襲撃事件のほとんどが1995年前半に起きており、その年の5月にはこれが公表された。しかしこの公表によってソマリア政府がそうした問題がある事を否定し、さらにはIMBが悪意を持ってソマリアを批判していると申し立てをした。被害件数は1995年には4件にまで減少した。1997年4月15日にはソマリア沿岸を航行中のバハリヒンデ号が、武装した一団に拿捕され、ソマリアの東海岸にあるガラードへ連れて行かれた。その事件で2等航海士が胸に凶弾を受けた。
中国/香港/マカオ―この地域も1994年のたった4件から1995年の31件へと被害件数が劇的な増加を見せている。しかし1996年には9件に減少した。中国や香港の港では賊が乗組員に気付かれないうちに船舶に忍び込んで船の装備品を盗むのが普通であった。 だがマカオでは銃を持った賊が客船フェリーを乗っ取り、乗客から160万ドルもの現金を略奪している。
その後も中国の税関の汽艇やそれに似た船が後をつけてくる、乗り込みを受けた、乗っ取りが起きたと言う届け出が続いている。
「HLH」地域―これは香港、ルソン、ハイナン島を結ぶ地域であり、日本と東南アジアの間を行き来する客船の安全が問題となり続けた場所である。だがそこは又、海賊による襲撃件数に唯一減少が見られる一番の危険地帯でもある。1994年には14件あった被害件数が1995年には12件に減っていることを強調したいが、1996年にはそれがたった4件になっている事はすばらしい進展ぶりである。