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このような杓子定規は正されるべきであろう。しかし、船乗りにとっては自分に向かって銃を発するのが強盗であるか、海賊であるかを知ってもそこに大した違いは無いのだ。 同じように盗まれた装備を再装備するまで港に停泊を余儀なくされる船主にとっても、こうした盗人が海賊なのか強盗なのかを知るより、いかにしてこの被害のために生じる費用を小額にとどめるかの方が大切なのだ。

 

こういうわけで、IMBは海賊を下記のように定義している。

 

海賊とは盗みやその他の犯罪を目的として、また、その行動を助長するために武力を行使する意図や能力を持って船舶に乱入する行為である。

 

この広範な定義により、IMBは船乗りが海上で受ける暴力と船主が受ける損失とについて詳しい分析を行う事が可能となる。海賊行為というのが何であるかという詳しくて明確なイメージがあることによって、海賊行為のタイプとそれの起きる頻度、そして世界中の各地で船舶に起きる略奪事件に関する包括的なレポートを作成する事が出来るのだ。この論文で掲載される例はIMBのファイルや公文書から引用した。

 

この論文はベトナムのボートピープルが受ける恐ろしい被害についての詳しい研究調査は含まれていない。東南アジアに特有の多人数による国外流出は終わり、それに伴って自国を去る人の受難も終焉を遂げた。

 

第2章 起原と発展

 

海賊行為は犯罪であるから、起訴して有罪と宣告して罰するというのは余りに簡単過ぎ、問題の解決にはならない。どうやって海賊行為に取り組んで行けばよいのか、満足のいく解決法を見つけようとする上で、経済、政治、法律/規則に関わる3つの根本的要因を調べる事が大切である。

 

経済的要因は海賊行為にとって最も重要な理由である。世界中のいろいろな場所で海賊行為というのが地域の文化において許容範囲にある事が多い。特に東南アジアのある地域においてはそれが不法行為であっても金銭取得のために当たり前の手段と考えられている。

 

暴力が日常沙汰の所では、収入を補充する手段として海賊行為が取り入れられるのは、道徳上、何の矛盾もなかった。それどころか場所によっては耕作地や経済状態が生活をしていく上で充分でない所の人々は、海賊行為による収入なしでは生きていけない事を知っていたのだからそれは生きていくのに唯一の手段であった。この様に、何代にもわたってひどい生活状態を経験し

 

 

 

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