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海賊に関する包括的報告(1997年11月)

発生件数、被害、傾向、対策と国際海事局による統計資料

 

ジャヤント・アビヤンカ (国際海事局)

 

第1章 序文

 

海賊やそれに関連した海上の犯罪については今まで学術的研究から新聞まで様々なところで多くが書かれてきている。最も大きな反響は間違いなく世界中の主流の新聞からもたらされる。しかしながら、その報道は海賊行動をセンセーショナルな記事として書くために必要以上に反響を呼ぶ。

 

こうしたセンセーショナルな記事は新聞の売れ行きをよくはするが、新聞が何を報道し何を報道すべきでないかを考えると、このような記事は不幸なことに偏った報道へと導く事になろう。それほど劇的でも何でもない普通の話しがニュースになるということはよくあることだ。だから、報道機関が海賊について広く世界的な目で見て、客観的な報道をすると思い込むのは賢明ではない。こうした正確性を欠く報道が海賊についての見方を色々な物にしている。事実を良く知らされていない人々は海賊と言うと、小説にでてくるような昔のイメージを持つ。しかし今日海で働く者にとって、海賊というのは単に歴史家の研究の対象という存在だけではない。彼らの抱く恐怖心は、海賊というのは被害者が単身で全く無防備の時に襲ってくるという現実に結びついているのだ。

 

多くの国々は、自分達の地域に問題があると認めたがらない。この事実が海賊にまつわる誤解を悪化させている。こうした国々は海賊を警戒する根拠がないとか、どう対処してもあまり違いがないと言う。不当な報道やほとんど効果のない策しかない現在、海賊によってもっと多くの被害がないというのは驚きである。

 

不幸な事にこの5年間には組織化された海賊行為が非常にその数を増している。この洗練されたやり方と組織とを見れば、海賊行為を働くことによって簡単な手段で非常に多大な利益を得ることができると考える犯罪集団が増えていることがわかる。金銭面での誘因に加えて、海賊は捕まったり、見つけられたりする危険がほとんどない事を知っている。こうした要因が今日の被害件数に現れているのだ。

 

この論文はこれまでの経過を分析し、将来海賊行為を減少させるために現実的で実行可能な方法を見つける事を意図するものである。

 

純粋主義者は今日海賊などはこの世界にほとんど存在しないと言うかも知れないし、彼らは正しいのかも知れない。1982年の国連の海洋法国際条約(UNCLOS)によれば、公海上での海賊行為は違法である。目下ほとんどの略奪行為は各国の領海内で起こっており、それは正式な海賊行為の定義の枠外なのだ。

 

 

 

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