理の協力に参加する義務がある。この義務には自国の海洋環境の状態を報告する義務も含まれている。安全保障について言えば、海洋データ・情報交換は重要なMSCBM(海洋安全保障信頼醸成措置)なのである。
情報・データ交換プログラムの追求は重要であるが、克服すべき問題も多数ある。第一に、地理情報システム・データベース開発は非常にダイナミックである。この分野の技術開発は急速であり、データ収集技術、保存技術、操作技術、送信技術、表示技術の面で進歩が速い。さらに、国家がそれぞれ異なったレベルの技術を用いている。第二に、国内および国際的なレベルで政府機関が多岐にわたり、調整が困難である。第三に、この問題は商業的にも海軍のオペレーションの上でも潜在的に微妙である。海軍のオペレーションには潜水艦オペレーション、潜水艦迎撃戦、機雷迎撃などが関連しているからである。第四に、海洋管轄権および未決着の海洋境界問題に関連した複雑な状況があるため、国家が自国の主権の譲歩を迫られると感じた場合、協力の可能性が低下する。最後に、海洋環境および健全な科学的知識・統合的データの重要性に対する一般認識が欠如している。要するに、海洋科学者にはまだまだ「伝えるべきメッセージ」があるのである。
注
1 本稿では「marine」および「maritime」を同義として扱う。(両者とも「海に関する」という意味を持つ。)つまり、「maritime」を船舶や航海の問題に限定する一部で採用されている定義は、ここでは採用しない。よって、ここで扱う「marine」および「maritime」データは、海、海底、海洋資源、海上活動に関する全ての情報を含むものである。
2 ’The ASEAN Regional Forum-A Concept Paper'in Desmond Ball and Pauline Kerr,Presumptive Engagement: Australia's Asia-Pacific Security Policy in the 1990s(Allen & Unwin, Sydney,1996),pp.111-19
3 GISは「地理データ、すなわち陸地・海洋資源、及びこうした資源を利用する人的活動についてのデータの保存と賢明な利用を促進するシステム」として定義できる。
Desmond Ball,‘Introduction’in Desmond Ball and Ross Baddage(eds),Geographic Information Systems:Defense Applications(Brassey's Australia,Sydney,1989),p.1.
4 K.J.Lyons,O.F.Moss and P.Perrett,'Geographic Information Systems'in Ball and Baddage(eds),Geographic Information Systems,p.17.
5 United Nations Conference on Environment and Developmet(UNCED),Chapter 17:'Protection of the Oceans, All Kinds of Seas, Including Enclosed and Semi-enclosed Seas, and Coastal Areas and the Protection, Rational Use and Development of their Living Resources' in Agenda 21, UNCED, Rio de Janeiro, 3-14 June 1992.
6 同上、パラグラフ17.97.
7 Chapter 37:'National Mechanisms and International Cooperations for Capacity-Building in Developing Countries' in UNCED, Agenda 21.
8 同上、パラグラフ37.1.
9 同上、パラグラフ37.2.