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間「事故防止に関する協定」が構築されており、大型軍事演習のさいの相互視察なども取り決めがある。いわば「協定」の先進地域といえる。

第2は「ラテンアメリカ」である。海上の信頼醸成措置は皆無であるが、各国海軍と米国が毎年実施する海軍演習を通じて協定が作成されている。

第3は「中東」であるが、最近の海上の信頼醸成措置形成には目覚ましいものがある。この作業は米露の支援を受けてカナダが作業グループの牽引車となっている点が注目される。カナダはノバスコシアでアラブ、イスラエル、パレスチナの海上要員が参加するワークショップを93年に実施し、94年にも中東の海軍指導者のためのセミナーを同地で開催している。その結果、同年11月には死海会議で「地域多国間事故防止に関する書簡」が合意され、12月のチュニスでの中東和平プロセス本会議では「書簡」の実施が決定した。このように最近の成果は目覚ましい。

最後に「アジア・太平洋」であるが、この地域には現在、最小限の「事故防止に関する協定」しか存在せず、また地理政治文化的にも冷戦後の世界において最も「協定」を必要とする地域なのである。

 

「アジア・太平洋」地域

筆者は、次に「アジア・太平洋」地域を4分割する。

第1は、朝鮮半島を含む「北東アジア」である。ここでは主要な領土問題も海洋に存在する。この地域は冷戦構造が継続しており、信頼醸成も冷戦時代の紛争回避措置に限るのが最善であると筆者は論じている。

「東南アジア」には非公式なASEAN海洋協力の長い歴史があり、ウエッブ状の多国間の信頼醸成がごく最近芽生えている。

「南太平洋」ではオーストラリア、ニュージーランドが島諸国との間で非軍事的側面から協力的制度を発展させている。

「インド洋」では地域に限定した信頼醸成の検討はあまりなされていない。

 

理論的構成概念

海上での信頼醸成措置は多様である。筆者は理論的な構成概念から次のフレームを提供している。それぞれ、表1、2、3に簡潔にまとめられているので本文参照のこと。

1。宣言措置(表1)

2。透明措置(表2)

情報交換/対話/兵器登録/軍隊間の接触・セミナー・兵員の相互訪問/

通信措置/通告措置/視察・査察措置

3。制約措置(表3)

危険削減措置/締め出し・引き離し措置/人的・装備・活動の抑制

 

「事故防止に関する協定」の2大欠陥

議論の出発点となる現行「事故防止に関する協定」には大きな欠陥がある。

第1は、公海についての取り決めであり、境界線や領海内での行動には言及がないことである。第2は、潜没潜水艦に関する規定がないことである。「事故防止に関する協定」に以上2点の重大な欠陥があることは十分認識されるべきである。

 

 

 

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