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でのテロ行為)、1985年に発生した地中海での観光船アキレ・ローロ号のハイジャック事件などがある。

このほかにも、??難民に対する海賊的な暴力行為?≠ェある。これは1970年代から1980年代にかけて頻発した事例であり、船で避難しようとした大量のベトナム難民に対して、特にタイ湾において発生した。また、近年、香港で頻発する??ヨット海賊?≠ネどがある。

 

アジア太平洋地域における最も一般的な形態の海賊、つまり近代海運業に対する海賊は、「ヒット・ロブ・ラン」(攻撃・略奪・逃走)によって特徴づけられる。つまり、短時間で船舶を拿捕し略奪するのである(国際海事事務局によると、平均的な犯行時間は30分間であり、5000ドルから15000ドル{米ドル}もの金品を奪取するという)。

南東アジア地域(マラッカ海峡及びシンガポール海峡)においては、ほとんどの攻撃が夜間に、あらゆる種類の商船(コンテナ船・大型輸送船・タンカー)を目標として実施される。海賊は、小型で高速のボートで船尾から接近し、フックやロープを引っ掛けて乗り込み、ブリッジやキャビンの乗客を脅迫するのである。

海賊たちは、通常、船舶の金庫の現金や電気製品を奪取する。他方、国際海事事務局の報告によると、堂々と接近し、武器を使用して船舶を停止させる海賊が、香港のルソン海南島の北において頻発している。

 

すべての事例において、海賊は現実的な危険をもたらす。それは、船員の生命の危険だけではない。交通量の激しい地域(マラッカ海峡とシンガポール海峡を通航する船舶は一日あたり200隻・うち半数が石油タンカー)での他の船舶に対する危険ももたらしている。

図表1はアジア太平洋地域での海賊の「ホット・スポット」(頻発する地点)を示している。図表2が示すように、国際海事事務局の海賊に関する年次統計によると、1992年及び1993年において、全世界で発生する海賊の3分の2以上がアジア太平洋で発生している。図表3が示すように、1994年には全世界で発生した87件の海賊事件のうち71件がアジア太平洋地域において発生しているのである。

 

図表4は、1994年に発生した海賊事件の地点を分布図で示しているが、近年における、注意すべき傾向については、別途、説明が必要である。

1990年から1992年の間における海賊事件の急増の後、マラッカ海峡とシンガポール海峡において、新たに国際協力体制が取られた(後述)ことで、この地域における海賊事件は激減した。

しかし、1992年から1994年にかけて、海賊事件が発生する地点は、香港のルソン海南島、南シナ海、東シナ海へと移動した。これらの地域での海賊は、多くの場合、軍服を着用した中国人が警備艇から発砲するなど、公然と、かつ軍事的な規模で行われていた。

 

 

 

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