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いまひとつの類型は付加価値税をもっぱら連邦政府だけが徴収し、税収分与のかたちで州・地方政府に交付するタイプの国々である。ドイツの共同税では、州政府が連邦に代行して売上税を徴収し、その一定割合(44パーセント)が州に配分されたのち、3/4は人口比例で、1/4は明示的な財政調整交付金として各州に配分される。分与税形態での付加価値税をもつ国として、先進工業国ではオーストリア、移行経済国ではロシアをさらにあげることができる。表1によれば、それぞれ一般消費税の29パーセント、28パーセントが州・地方政府に配分されている。なお日本の地方譲与税(1989-1996年)も分与税形態の付加価値税であるといえる。

 

最後に、一般消費税(取引高税、小売り売上税、付加価値税など)を中央・地方のどちらか一方の政府レベルが掌握するのではなくて、双方が並行して賦課・徴収する国々がある。このパターンに属している代表的な国として、途上国ではブラジル、インドおよびアルゼンチンを、先進工業国ではカナダと1997年度以降の日本をあげることができる注4。途上国では個人所得税や法人所得税、あるいは個別消費税から追加的な歳入を確保することがむずかしい。信頼しうる会計・記録の慣習を欠き、貯蓄が不足している途上国では、所得税からの税収入にはせまい限界があるし、また膨大な零細事業者の存在や税回避のリスクから小売売上税も魅力的な税源の選択肢とはならないことを反映している。

 

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おそらくカナダはこの問題についての最も興味深い対象のひとつといえよう。カナダには全部で10州あるが、一般売上税のシステムは5種類ある(表2参照)。連邦政府の付加価値税である財・サービス税(Good and Service Tax)は全国あまねく徴収されている。アルバータ州では連邦GSTが唯一の売上税である。4つの州(ブリティッシュ・コロンビア、サス・カチュワン、マニトバ、オンタリオ)では連邦GSTに加えて、各州が独自に

 

注4これらの国々における一般消費税の配分を概観するには、Ter-Minassian,T.ed,[1997].Fiscal Fediralism in Theory and Practice,International Monetary Fund.が便利である。

 

 

 

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