日本財団 図書館


? この税源移譲については、様々な観点からの議論がありうる。すなわち、国と地方の財政状況を比較すると国の方が債務残高は多く(平成9年度末見込み国254兆円 地方146.9兆円)、財政再建が課題となっている現状では国の税源を減少させることにつながる税源移譲は適当ではないのではないか、また、公共事業の財源は建設国債であることから、公共事業に対する国庫補助金を廃止・縮小しても、そもそも移譲対象となる国の税財源は存在しないのではないか、或いは国庫補助金の縮減は事務事業自体の廃止につなげ、国民負担率を抑制すべきではないか、との議論もある。

これについては、先般成立した財政構造改革の推進に関する特別措置法に基づき現在進められている財政再建は、国・地方を通じた財政再建を目標としているところであるが、地方分権を推進し、事務権限の移譲、国の関与の縮小、国庫補助金の廃止・縮小等を進め、これに伴い税源移譲をすることは国・地方を通ずる行政の簡素・効率化となり、ひいては国・地方を通じた財政再建につながってゆくのではないかと考えられる。また、税源移譲が進み地方税の割合が高まれば、納税者が身近なところで税を納め、それがどう使われるかを監視していくという度合が高くなり、また、住民の受益と負担の関係が明確化するので、地方公共団体における税の使われ方も更に効率化するのではないかと考えられる。こうしたことからすると、地方への税源移譲は財政再建に反するものではなく、むしろ財政再建の趣旨にかなうものと言える。

次に公共事業の国庫補助金の財源は建設国債であり、国庫補助金の廃止・縮小をしても移譲すべき税源は生じないとの議論については、こうした議論は、公共事業の財源として、本来、税は予定されていないとの前提に立っているかのようであるが、建設国債は、制度上は、公共事業費等の財源として国会で議決された範囲内での発行が認められているというものであり、歳入の状況によっては税をはじめとする他の財源の充当も当然予定されているものであり、また、建設国債の償還財源は最終的に税であることから(国庫補助金を廃止・縮小し、当該事務事業を引き続き地方が実施する場合には、国と地方の税源配分を変更する議論につながるものであると考えられる。

なお、国庫補助金の廃止に伴い、事務事業自体の廃止が検討されるべきことはいうまでもない。そして廃止が実現した際に、その国庫補助金に相当する分、国税が減税されるとすれば、地方公共団体は、課税自主権の尊重と相まって、事実上地方税の税率決定の自由度が高まることにもなるので、その意味からも住民の受益と負担の選択の自由の拡大に資するものと考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION