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(2) 収入に安定性があること

地方団体の経費にはその行政事務の性質上経常的なものが多いし、また、市町村の多くはその財政規模が小さいので、地方税とくに市町村税は、年度ごとにその収入額が急激に増減しない種類のものであり、増減するとしても年度間の調整ができる程度のものであることが必要である。まして、社会の進展とともに地方団体の行政についても、住民の福祉を保障するための最低限の画一的行政が要請されているのであるから、収入の激変しやすいものや単に一時的な収入を得るに過ぎないものは望ましくない。固定資産税、たばこ税、自動車税等は最もこの趣旨に沿う税である。もとより景気の変動に伴い収入の増減する税種も地方税として必要であり、現収入の増減を通じて地方団体はその区域内の事業発展や盛衰に関心を寄せ必要な対策を講じていくものである。なお、税収人の増減の結果団体の財政に混乱を与えないよう、地方交付税制度が設けられ、毎年度基準財政収入額を推定し、その額が基準財政需要額に不足する場合においては、その不足額を地方交付税をもって補てんすることとされ、地方税収入と地方受付税収入の合計額では安定した財政収入が得られるしくみになっている。

 

(3) 収入に伸張性があること

社会は年々発展の過程にあるが、これに伴い住民の福祉に直結している地方団体の行政も質量とも増加していく傾向にある。したがって、地方税もこのように増加していく経費に対応する収入をあげうることが必要である。道府県民税、事業税、不動産取得税、軽油引取税、市町村民税等はこの趣旨に沿う税である。

 

(4) 収入に伸縮性があること

地方団体がどのような行政をどの程度行うかは、地方団体自らの意思によって決定されるべきものであるから、その行政に必要な経費を賄う収入についても、地方団体の意志によって自らこれを増減しうる働きが必要である。このような働きは自主財源たる地方税収入にこれを求めるべきものであって、現行地方税制度が法定外普通説の設定を認めるとともに、大部分の税目につき地方団体のとるべき税率について標準税率の定めをもって臨んでいるのはこのあらわれである。

 

(5) 負担分任性があること

住民がその地方団体の行政に要する経費を負担し合うということは自治の基本として欠くことができないものであり、このことから、広く一般住民が何程かでもその地方団体の経費を分担するような税制が必要である。道府県民税や市町村民税は最もこの趣旨に沿う税である。

 

(6) 地方団体の行政又は施設と関連性(応益性)があること

地方団体の行政には権力的な行政のほかにサービス的行政の分野があり、住民はこれらの行政特にサービス行政の面からなんらかの利益を受けているのが普通であり、したがって、地方税にはこうした受益に応じて負担されるものがあってよいのである。地方団体が行う行政のサービスを受けた地方産業は発達し、住民の所得は培養され、この培養された所得を税源としてあげられる税収入はまた地方団体の行政経費に充当されて住民の上に還元されていくべきものである。地方自治はこのような過程を経て発達していくことが望ましいのであって、この意味において、地方税のうちには、ほ益性のある税があることが必要とされる。また、この応益性が要請されることに伴い、地方団体ごとに課税権が分別されやすいものであることも同時に必要である。こうした意味で、地方税には物税が適しているが、事業税、固定資産税等は最もこの趣旨に沿う税である。

 

 

 

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