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また、そうしていかないと問題は解決できないという新しい市長の政治姿勢をみることができる。

確かに日本という国は西欧諸国と異なり、数値目標を高く掲げ、それに向かって汗をかいて努力するということを嫌う国民のように思える。そういった行動の裏には世間やマスコミが結果のみを見て判断をすることが多いということがあるからではないだろうか。目標が達成できない場合には責任問題に発展することもある。そういったことを考えると勢い行政としても数値目標を掲げる場合にはあえて高い目標を掲げるより、実際できる範囲での目標を掲げ、近い達成率を高くすることによって、責任問題が生じるのを回避しようとする。

しかし、地球環境問題のように多くの市民を巻き込まなねば、解決できないような場合には、これまでのような手法では真の問題解決にはならない。大切なのは高い目標を掲げ、それに向かって真に努力をし、汗をかく姿を市民に見てもらう。情報を提供し、開示しながら、その姿を見てもらうことではないだろうか。そして、結果として目標に達することができなかった場合には率直にその理由を市民に説明し、理解を求める姿勢が大切なのではないだろうか。

その中からこそ、行政と市民との理解と協力が育ち、真のパートナーシップが成立する。そういった行動に行政が率先して旗を掲げようという精神をこの決断にみることができるのではないだろうか。

いずれにせよ、具体的な行動目標は今後にまたれるが、その中でも先行して公表されているものに「環境家計簿」の実践がある。環境家計簿は消費者が楽しみ、また、家計費の節約に励みながら、結果として家庭生活から出る二酸化炭素の削減につなげようということで、環境庁が提唱しているものである。本市ではすでに平成5年から、地域で住民が中心となって環境保全活動が実施できるように、モデル地区を設定し、「生活環境チェック」と名付けた冊子を配布し、どれくらい環境に配慮した行動ができているかを調べ、ライフスタイルの見直しのきっかけづくりを実践してきた。これまでに12学区をモデル地区として実施してきたが、二酸化炭素の10%削減を提唱して以降は本市独自の環境家計簿をこれまで以上に広範囲に配布し、市民の意識啓発を進めていく予定である。

(3)環境教育の推進

地球環境問題、とりわけ二酸化炭素などの化石燃料を消費することに起因するといわれる地球温暖化の問題は、19世紀の産業革命以降、顕著になってきた問題である。したがって、問題の解決は一朝一夕にしてなるものではなく、子子孫孫に至る長いプロセスの中で解決されなければならない。その意味でも現代の子どもたちの意識が鍵になる。

本市では、よりよい環境の保全、創造に向け、市民一人ひとりの環境に対する理解を深め、環境を守るための行動へと結び付けるとともに、子どもたちに環境の大切さを理解させ、環境対策を体系的・総合的に推進する拠点施設として、平成7年に環境学習センターを設置した。名称は一般公募により環境を学ぶ仲間が集まるところという意味で「エコパルなごや」とされた。

事業内容の主たるものは、パソコンで謎解きをしながら地球を取り巻く現状と未来を考える「地球環境コーナー」、登録会員となって名古屋市に生息する生き物たちを実際の生活の場で再発見し、自分の発見した生き物をパソコンに登録したりする「地球環境コーナー」、環境に優しい暮らし方、身近な環境などをやさしい実験や楽しい工作を通して学んでいく「ワークショップコーナー」などがあるが、中でも、この施設の特色であり、子どもたちに一番人気があるのは「バーチャルシアター」である。これは日常生活では体験できない、例えば、土の中、深海の様子などをコンピューターグラフィックスによるリアルな映像を体験しながら、グループ別に協力し、ゲームを楽しみながら、今まで気付かなかった多くの生き物の関わりや役割を発見し、学んでいくものである。(図6)

来館者は小中学生、学校関係者をはじめ、1日平均200人程度であるが、本市ではこの「エコパルなごや」を環境学習の拠点として位置付け、小中学校はじめ各種団体と連携をとりながら幅広い講座、イベントなどの環境教育事業を総称して「エコカレッジ事業」として展開している。

例えば、「エコパルアドベンチャー」では、「環境にやさしくするには、まず、身近な環境をよく知ることから」ということで、私たちが暮らす身近な環境に目を向けさせるきっかけ作りとして、市内の小中学生500人を対象に、季節ごとに指定された生き物を家の近くで探し、エコパルなごやへ報告するという調査活動を実施している。

また、「エコパルスクール」では、小学4、5年生を対象に毎月1回テーマを決め、暮らしと環境との関わりを学ぶ体験型の環境講座を実施している。

 

 

 

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