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それを実現する金型、切削、研磨などの基盤技術産業との連携、これまで培ってきたモノづくり都市としての歴史を踏まえ、次から次へとビジネスチャンスが生まれる世界最適地・開発創造拠点づくりを目指している。

モノづくり都市の再生に向け、「新エネルギービジョン」をもとにした情報連携,企業連携への仕組みづくりが必要である。

? アジアと共に生きる〜環境技術の移転の側面から

川崎市は姉妹都市の藩陽への環境技術移転のための努力をこれまでも行ってきた。しかし、両者の求める移転技術の差や、負担する費用についての認識の差があまりに大きく、いまだ実現には至っていない。適正な技術の提供をどうしたら行えるか。その地域を長い眼でみながら、アジア諸国がいまもっとも必要としている環境技術と、川崎市の提供しようとしていた高度な技術との差、費用などを再検討していく必要がある。

環境技術移転について、大連理工大学の周教授は、日経新聞で次のように述べている。「地球温暖化防止は発展途上国抜きには不可能である。例えば、中国が二酸化炭素削減策をとらなければ、来世紀末には世界が目標とする排出量の全量を中国だけで排出することになる。しかし、途上国の自助努力には限界がある。先進国からの技術移転、資金援助の拡大が望まれる。」そして、実現する手段として「日本の環境技術を移転する日中合弁企業、すなわち、市場原理に沿った形での技術移転であり、市場ニーズと日中双方の企業の収益を踏まえ、拠点となる合弁企業」を中国に設立することを提案されている。

技術移転の費用は日中双方が負担し、移転後の便益も双方が享受すること、市場原理に基づき環境技術の移転を図ろうという提案である。JICAや川崎市に立地する企業との連携の中から、糸口はつかめないだろうか。市場にゆだねること、ここに一つのヒントがある。

先日、中国に進出したある中小企業の社長が、私たちの開催する「モノづくり研究会」の場で、次のように語った。「自分たちの工場を環境に配慮したモデルとしたい。先進国と途上国の溝を、そこに立地し操業する工場が埋めていくことが理想だ。これは、川崎の地で操業し、公害という負の遺産、環境を汚す苦渋を知った私たち企業の使命であり、知的な貢献である」と。

また、NGOの活動も地域にあった適正技術の移転の事例としては参考になる。フィリピンの「風の学校」、井戸堀り技術の提供など、途上国で役立つ技術の提供とはどういう意味を持つか。アジアと共に生きることを常に意識し将来を見据え、企業、市民との意識交流を通じた環境技術の移転を実現したい。

? ISO取得補助金

ミクロメディカル、高津区にある従業員10人程度の小さな企業である。だが、ここで作られるX線の部品は、ヨーロッパやアメリカ市場で大きなシェアを得ている。ここは、IS0900を既に取得している小さな大企業である。

ISOは、製品輸出の前提条件となりつつある国際標準化機構であり、IS09000シリーズは、品質管理・品質保障に関する包括的な規格であり、具体的な生産工程、マニュアルなどを文書で示し、将来的にもその水準を維持することを、第三者機関に認証してもらう仕組みである。

海外市場に展開するうえでの取引や入札参加資格として、必要性は増大していく。

川崎市は平成9年度から、IS09000シリーズとIS014000シリーズについて、中小企業のISO取得補助制度を開始した。百万円を限度としてその半分を補助するものであり、モノづくりの街、産業の活性化を目指している。

? 新たなまちづくりに向けて

ゼロエミッション団地建設に向け、構想策定作業が進んでいる。排出抑制、再利用、再資源といった手法を用いて、工場からの廃棄物ゼロを目指すものである。これを「街づくり」へと展開すること、ここでの智恵を活かすことが次に求められていく。

根本的に二酸化炭素を出さないような産業構造への転換、都市構造の構築、環境調和型の新しい都市デザインに向けて。

 

 

 

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