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お土産と文化

 

さっき申し上げた文化の話に少し戻りますが、全国あちこちホール造りましたね、流行りのように。造ったけれど、文化会館もそうですが、中に入れるものがないわけで、ソフトが無いってことは、この何年来、大変問題になっています。中で盆踊りやったりなんかしているらしいんですけど。ある所のクラシックの作曲家の名前のついたホールなんですけれども、その後どうですかって聞いたら、「いやあ、うまくいっています」。どういうところでうまくいっているのかって聞いたら、「なんとかこけしとか、なんとか饅頭っていうのが売れています」って言うんですよね、ホールの名前のついた。それちょっと違うんじゃないかと思うんだけれども。まあ、それもダメとは言いませんよ。ですけど、どうもそっちのほうにみんないっちゃうんですよね。饅頭つくったっていいんですけど、その饅頭が今とっても変だなと思うのは、これはお隣りですけど、宮城県の必ずお土産に買うカスタードのクリームの入っているフワフワした…そうそう萩の月。あれが最初出た時はおいしいお菓子だって東京でもみんな言っていたんですが、萩の月まがいっていうのが、全国いっぱいあるんですね。それから、松山にタルトっていうのがありますよね。真ん中に柚子のあんこを入れてロール状になったの。これはずいぶん古くからあるんですが、そのまがい物も全国各地にあるんです。一つ当たるとみんな真似しちゃうんですね。気持ちが分からなくはないけれども、もう少し考えてほしいなと思う。なんか、お土産の話になっちゃいましたけど、お土産だって本当はとっても大事な産業です。こちらは賢治の古里とか啄木の古里とか、本当にたくさん財産を持っていらっしゃるわけですよね。そういうところを訪ねて来た人たちが何を買うかっていった時に、よもや萩の月に似たものは売らないでほしいな、というふうに私は思いますけれども。

もちろん古来のお土産もたぶんあるだろうし、古来のいろんな産業、いろんな生産物もあると思うんですが、それをもう1回現代風にアレンジして、どうやって練りこんでいくか、実はそういうところに文化というのはあるんだろうと思うんです。建物建てたり、というのも今まではいいんですけど、そういう時代じゃないわけです。そこのところにソフト、何も演奏家呼んでくるとかだけじゃなく、食べ物の文化だってソフトだし、どういうふうに今、持っている財産を今風にアレンジしていくかということが、実は、一番最初の、地元でいかに自立できるためのお金をつくるかというところにからんでくるわけです。ですから、これはさっきの三つ、全部に係ってくる問題だと思うんです。そういう形で私たち個人々々に戻ってくる問題だと思うんです。個人々々に戻ってきて、みんながワイワイ勝手にやってうまくいくわけでもないので、そのあたりを調節してくれるのが、きっと政治、行政というものだろうと思うんです。

そういう形でぜひこちらから、東京に住む私たちに刺激的な財産をこちらたくさん持っていらっしゃるわけですから、私たちが、なるほどこれなら賢治に負けない、あるいは啄木に負けない、あるいは柳田国男に負けないというような、例えばお土産でもつくっていただければ、私は今日買って帰れたら一番いいですね。ともかく、そういうことを、みなさんが自分自身の問題として考えていただければいいんじゃないかなと思っています。そして、それは実は私自身の問題でもあるなというふうに思い聞かせているところです。というところで時間になりましたので、私の役にも立たない話を終わらせていただきたいと思います。みなさんご清聴ありがとうございました。

 

 

 

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