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基調講演

 

テーマ:「森と碁らす、森に学ぶ」

講師:柳生博(俳優)

(手話通訳:杉山克子、福岡志廷)

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俳優。1937年茨城県生まれ。

視力の低下により船長への夢を断念、俳優座養成所に入所。

1961年東映映画「あれが港の灯(ひ)だ」でデビュー。

NHK朝のテレビ小説「いちばん星」の野口雨情役で一躍脚光を浴びる。

現在「生きもの地球紀行」(NHK)、「平成教育委員会」(フジテレビ)にレギュラー出演、テレビ・映画・司会等と幅広く活躍。

私生活では山梨県八ヶ岳南麓にアトリエを建て約7,000本もの雑木を家族と共に移植してきた。

著書に『八ヶ岳倶楽部 森と暮らす、森に学ぶ』(講談社)

 

柳生でございます。いい天気なのに、こんなにおおぜいお集まりいただいて、ありがとうございます。

私は、関東地方の茨城県に生まれ育って、いま、東京と八ヶ岳に住んでおります。関東から出てきますと、あらためて、関東に生まれ育ったぼくは田舎者だなということをいつも感じます。ここにお住まいのみなさんには、あまりそういうことはないかもしれませんが、まるで民度のちがいのようなものをいくつも感じることがあります。民度というと、へんな言葉とお思いかもしれませんが、レベルの高さというのですかね。自分のふるさとをあまり悪くいうのもなんですが、関東に生まれ育って、なんともがさつで、なんとも粗野で、だから一所懸命勉強したのかなというのもありますしね。こちらに来ますと、まさに京都、京の都、そしてかつてはその玄関口であった丹後半島であり、舞鶴であり、そしてそこのとてもたくさんの人たちが、物資が、文化が、魂が往復していったであろう、そしてクロスオーバーしていったであろう福知山。そのようなことを考えますと、私の生まれ育った関東、茨城県、東京というのは田舎だなと、すごくそういうものを感じます。きょうはどうぞ田舎者の話を、1時間ちよっといただきましたので、聞いてください。

環境の話ですが、どうでしょうみなさん。環境とか自然とか、そういう言葉から入ってしまうと、とてもつかみどころのない、だけどそれを何度もいっているうちに、とても頭がジーンと麻痺していくような、そんな感じになることはありませんか。じつはぼくは、環境とか――エコロジーというのが、世界各地にいってもたった一つの世界中のテーマ、共通語なのですが、あまり抽象的なこと、一般的なこと、一般論、抽象論をいってしまうととても虚ろな感じがする、きょうこのごろです。

きょうは、私は学者ではありませんで役者ですので、きわめて個人的な、なるべく自然とか環境とか、そういうちょっとよくわからない言葉はあまり使わないようにして、みなさんと話をしたいと思います。きわめて私自身の話だけをします。ですから、みなさんもきょうこれからは――われわれの世界でそれをオーバーラップというのですが……。

オーバーラップというのは翻訳できますか。

 

●手話通訳 指文字という手話がありますので、それで「オーバーラップ」といたします。

 

●柳生 オーバーラップというのは、私がいまテレビに映っているとしますね。そうすると、みなさんが私をじっと見ているうちに、死んだじいさんの顔がスッと浮かんできたりね。(笑)ないしは、むかし飼っていたウシ

 

 

 

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