悟を決めていた。
しかし、この心配も一流の演奏や歌に助けられ、観客からは感謝と今後も続けてほしいと励まされた。
狂言師野村万作による薪のある実い祭典
平成9年8月、日本を代表する狂言師野村万作一門の公演が新装なった能楽堂で開催された。
この公演の仕掛人も前出の伊勢谷氏であり、町の中心部近くにありながら朽ちていた神楽の舞台を再利用できないかという発想からだった。
野村一門の公演が可能だとわかると、町は茅屋根の全面葺替えや橋懸り等の改修を行った。
運営主体はブナの森コンサートを成功させた実行委員会を発展させ、新名称「まつのやま茅吹会」として取組むことになった。
事務局はそのまま振興課に置くことにし、チケット予約開始時には臨時電話1台とアルバイトで対応するはずだった。
事務局の判断ミスでポスターやチラシが完成する前に新開発表となってしまい。またもや役場の電話回線がパンクするところだった。
公演は昼夜の2回だったが、たきぎ狂言の雰囲気を楽しみたい人が多いのか夜公演から売れていった。
かがり火に映しだされた茅葺きの能楽堂は幻想的であり、セミ時雨と木立ちを渡る風が夏の暑さをやわらげてくれた。
この公演でも遠すぎる駐車場が間題になったが、足の不自由な方を会場までピストン輸送したこと、沿道に趣向をこらした灯籠を設置したこと、要所にスタッフを配置したことなどで苦情は皆無に等しかった。
むしろ次回を期待する声が多く、本物や一流の芸は人を引き付けるだけの魅力を持っていることを認識させられた。
今後の展開と町づくり
町づくりは人づくりと言われる。
どんなにすばらしい計画があっても、それを実行に移すのは人である。
多くのイベントはボランティアに支えられており、そのボランティア組織の強化と若千の謝礼は必要不可欠と思われる。
さらに地域で活用できる資源をもう一度見直し、自分たちの意見だけでなく外部の声も真摯に受け入れなければならない。
当町は「芸術と文化の香る町づくり」を始めたばかりで、目に見えて効果がでるのはまだ先になる。
芸術というと美術・音楽・文芸・演劇などの固定観念が先行するが、そのような型式にとらわれる必要はない。
文化にしてもその土地に根付いているものは大切にし、風土に合った新しい文化を生み出せばよい。
たとえば荒廃している棚田に花を植えるだけでも芸術になるし、これが続けば文化となる。
お金さえあれば施設はいくらでもできるが、地域に根ざした文化は買うことはできない。
四季折々の豊かな自然や古くから伝わる文化を守りつつ、ブナの森コンサートのように地域資源を活用した独自の芸術文化が花開く町、そんな夢を実現したい。
なお、今年のブナの森コンサートは5月31日、野村万作公演は8月1日の予定なので、興味のある方はぜひお越しください。