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けられている案件に関し地方公共団体がその義務を果たしたかどうかをめぐって対立が生じた場合については、係争処理手続による解決が予定されている。国との合意(または国の同意)を要する案件において国が合意(同意)しない場合についても同様である。

是正措置要求――委員会勧告は、地方公共団体による自治事務の処理が法令に違反しており、または著しく適正を欠き明らかに公益を害していると認めるときは、国はその是正または改善のため必要な措置を講ずべき旨の是正措置要求をなしうるものとしてる。現行地方自治法246条の2に定める内閣総理大臣の措置要求の制度に代わるものである(ちなみに、新しい制度において、是正措置要求や次に述べる指示を行う主体を、国の行政全体の長としての内閣総理大臣にするか、それとも国の各行政機関の長ないしは主任の大臣にするかという問題があるが、係争処理の仕組みとの整合性などを考えると、是正措置要求等の主体は行政機関の長とするのが妥当であろう)。この是正措置要求は、地方公共団体の事務処理(一定の作為または不作為)が国の法令にてらして是認しえないものである場合において、いわば事後的にその是正改善を求める行為である。したがってそれは、概念としては、法定受託事務の場合の指示が、そのような場合にのみならずそれ以外の場合にも可能であり、したがってその内容も一定の作為・不作為についての是正改善だけには限らないのと比べて、要件においても内容においても限定されたものである。この是正措置要求については、委員会勧告によれば、国は個別法の規定をまつまでもなく一般ルール法自体を根拠としてそれをなしうることとされている。是正措置要求を受けた地方公共団体がそれに不服がある場合には、係争処理手続によって争うことができる。

是正措置要求に関しては、その法的性質、とりわけ、相手方地方公共団体に対する拘束力の有無が問題となる(ちなみに、現行地方自治法246条の2による内閣総理大臣の措置要求の法的性質に関しても周知のとおり種々の議論がある)。微妙な問題ではあるが、これについては、?自治事務の処理をめぐる地方公共団体と国の行政機関との役割分担のあり方からいうと、一般には国の法令の解釈適用に関しても地方公共団体がまずは自らの判断と責任においてその解釈適用を行ってしかるべきであること、?是正措置要求に対しては地方公共団体は所定の係争処理手続によって争いうるものとされていること、および、?自治事務とはいえ、行政担当者間の見解の違いの故に法の解釈適用の乱れが長期間続くのは行政のあり方として好ましいものではないこと等を、それぞれ考慮する必要がある。これらの諸点に鑑みれば、国の是正措置要求に不服のある地方公共団体は、所定の期間内に係争処理手続によってそれを争うべきであり、争わなかった場合や、争ったけれども功を奏さなかった場合には、当該是正措置要求に従わなければならない、言いかえれば、国の是正措置要求はそのような停止条件付きで相手方地方公共団体に対して拘束力を有するとみるのが妥当であろう。この点は、法定受託事務の場合の指示、および、次に述べるように自治事務に関して例外的に認められる指示が、そのような停止条件に服することなく当然に拘束力を生ずるのとは異なる。また、これらの指示の場合には相手方地方公共団体は指示に係る特定の措置をとるべく拘束されることとなるのに対し、是正措置要求にあっては、地方公共団体は基本的には是正改善のための何らかの措置を講ずべき旨の拘束を受けるにとどまり、その意味で約束の程度も弱いと言える。

指示―以上の是正措置要求のほか、委員会勧告は、一定の特殊な場合に限っては、自治事務の処理に関しても国が個別法の規定により個別に一定の措置を講ずべき旨の指示を行うことを認めている。「個別に」というのは、法定受託事務の場合とは違って当該事務の処理方法等についての一般的な指示権を設定することは認めず、個別案件についての指示に限るとの趣旨である。そのような指示が認められてしかるべき特殊な場合としては、?国民の生命・健康・安全に直接関係する事務の処理について緊急時に指示を行う場合(例、

 

 

 

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