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ような反対運動のようにはいかず、観光地として様変りした湯布院の現状と、田園の自然環境を守ってゆけない住民の実情が、町だけでなく住民の意識をも変えてしまったのである。

そんな開発ブームのなか、行政は平成2年に「潤いのある町づくり条例」を制定し、乱開発に歯止めをかけた。この条例には、開発業者に対して開発予定地域の事前環境調査や、事業計画の内容を30日間公開し近隣関係者の充分な理解を得ることを義務づけている。また、都市計画区域内の第一種住宅専用地域では、空地率(敷地面積に対して空き地の占める割合)を厳しくするなど、これまでの自治体に例を見ない内容の条例となった。この条例制定後は大きな開発もなく、町の動きも緩やかになったように思える。

 

〈町づくりへの参加〉

バブル景気による開発ラッシュや、その開発に歯止めをかけようとする行政の動きの中で、私達は平成元年に「ゆふいん探偵団」を結成した。町づくりや物事にとらわれることなく、自分達の暮らす町の中で何か楽しいことをしよう、というのが始まりであった。団員は約10名、皆湯布院出身で大学を卒業し帰郷してきた人達ばかりであった。私達はその年、ふるさと創生事業1億円が「視てくる運動」として活用されると知り、早速企画書を作成、いただいた30万円を手に全員でヨーロッパを旅したのである。行き先はドイツの温泉保養地バーデン・バーデン。この地は30数年前に湯布院の人達が訪れた地でもあり、この町を目標に町づくりをすすめてきたという経過もあった為、どうしても訪ねたい所であった。実際にこの街を訪れ、温泉を利用したクワハウスや緑あふれる街並み、生態系にそった河川など観るものすべてが私達にとって感動と夢をあたえてくれた。私達はわずか10日程の旅行の間、毎晩のように自分達が住みたい町の理想を描き、目の前にみるヨーロッパの街並と照らしあわせながら夢を語り合った。そして、この旅行こそが、湯布院の「町づくり」を考えるきっかけとなったのである。

私達は旅行からもどり、すぐに「おばけちゃん」というミュージカルをおこなった。内容は「おばけちゃん」の住む美しい森を、開発業者から守るというもので子供向けのミュージカルであったが、乱開発の進むこの町で、その事の問題点や危機感を自分達自身で表現することが、当時の湯布院で出来た私達なりの町とのかかわり方であった。

その後、探偵団の活動は個別活動となり、環境問題に取り組む人、子供の問題に取り組む人、ロックコンサートを主催する人等、それぞれにやりたい事をみつけ、小さな町の中で活動を行っている。

私自身、平成2年に第1回女性フォーラムを湯布院町に住む女性5名と企画。地域総合計画研究所の猪爪範子さんを講師に迎え、何かと男性中心に事が進むこの町で、あらゆる世代の女性達に町の暮らしや、環境について問題点を投げかけ、少しでも女性が発言出来る場を増やそうと行った。このフォーラムの中では主に、子育ての問題とそれに伴う環境問題についての意義ある話し合いができ、その後、さまざまな地域活動に取り組む女性達が増えてきた。その活動の中でも、河川を守ろうと、廃油を利用した石鹸づくりを進める女性達の活動によって「ゆふいんシャボン玉工房」が町の助成によりつ

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