平成9年度コミュニティづくり東北ブロック研究集会
県名 宮城県
所属 環境生活総務課
担当者 鈴木 仁
電話 022-211-2522
各県のコミュニティづくり活動状況
テーマ 歴史的遺産の復元・保存活動を通した地域づくり
発表者 宮城県環境生活総務課県民生活係 主任主査 鈴木 仁
◆平沢地区と「羽前街道」
蔵王町の北部にある平沢地区。この地にある四方峠を超える街道は「羽前街道」と呼ばれ,川崎町の笹谷峠を超えて,出羽(山形)に通じており,今から900年を遡る昔に開かれた歴史の道である。江戸時代には出羽の国の大名が参勤交代のルートとして用いたという由緒ある街道であったが,昔の面影を残すのは,笹谷峠と四方坂の2か所だけとなり,「埋もれた道」と化すようになっていた。
◆旧羽前街道保存協議会発足のきっかけ
地区公民館で「地元の遺跡めぐり」事業を実施したところ,参加者が最も興味を持ったのが「旧羽前街道」であり,「こんな素晴らしい遺跡があったなんて」という驚きから,次第に「ぜひ復元して後世にも伝えよう」という動きへと発展,地区住民を挙げて保存していこうという気運が高まり,平成6年4月に,旧羽前街道保存協議会が発足した。
◆眠りからさめた歴史街道
平成6年4月から,史跡整備と景観確保の観点から,竹や雑木の刈り払い,不要な木の伐採,植物名札の環境整備を行い,重機による駐車場整備等,半年にも及ぶ地区住民のボランティア作業の結果,街道は見事に復元され,平成6年11月「旧羽前街道復元落成式」が行われた。街道入口に「羽前街道ささやにいたる」と書かれた標柱や案内板が設置され,参加者総勢200人以上が旧街道を散策した。
このようにして,蔵王町で唯一の歴史の道が,地区住民の手によって復元されたのである。
◆「旧羽前街道道中まつり」の開催
復元落成式に参加した人々から,「道中まつり」の提案が出され,平成7年10月に第1回の「道中まつり」が実施された。以後毎年開催され,今年で3回目(H9.11月開催予定)となり,地域活性化のイベントとして定着してきた。
《第2回道中まつりの内容:H8.10.13開催》
・町長扮するお殿様と地域住民が扮する袴姿の侍,陣笠姿の若者衆らの大名行列
・関所,街道由来館(火縄銃,刀などを展示),弓道場,野点,街道茶屋の設置
・現代版「文治の合戦」(四方峠をはさんでの綱引き合戦,玉入れ合戦)
・伝統芸能「春駒・平沢榊流神楽」の披露
他に芋煮サービスもあり,住民手作りのイベントに,町内外から集まった約600人の参加者で賑わいをみせた。
このイベントも地区住民のボランティアが中心となって実施されたものであるが,会では,地区住民が一致団結し,地域への誇りと愛着を持ち,これらの歴史的背景を基にした地域のアイデンティティの確立を図りながら,さらに地域の活性化につなげようと取り組んでいる。