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が必要である。すでに述べたように海洋観測は経費とマンパワーを要し,そのためには海洋における経済活動の高まり,すなわち,海洋開発が欠かせないとわたくしは思う。例えば,海洋空間利用として過去においては廃棄物の投棄であったが,管理された倉庫として海洋を利用して行きたい。図5に昇降式の倉庫の想像図を示したが,海底から海面までの支柱は観測プラットフォームとしても活用できることを期待している。

 

4 おわりに〜海洋予報を目指して

 

海洋は広大でその観測は世界の協力が必要である。国際連合の組織で海洋学を扱う機関ユネスコの政府間海洋学委員会は,世界海洋観測システムの構築を進めている。世界海洋観測システムは英語の略号でGOOSとよび5つの目的を持っている。気候に与える海洋の役割と海洋の変化の解明,食料となる海洋生物資源に関すること,人口の集中している沿岸域の管理,海を健康な状態に保つこと,そして観測やデータ情報の提供など海洋業務の拡充,の5つである。

日本は気象庁,海に保安庁水路部,水産庁,都道府県,そして大学が観測船や研究船を用いて日本の沿岸,近海,そして西太平洋で定期的に海洋を観測している。国際的には定期的な海洋観測の実現が課題であり,日本の定期観測網は世界でも例がなく海洋国として誇ることができる。日本の海洋研究者の討議で,黒潮の大蛇行や冷害を引き起こす親潮の南下などの予報を行うために,新しい観測項目と方法が必要であることが認識された。その1つは海流の流量と熱輸送の定量的モニタリングである。1997年までに四国沖に多数の流速計の係留と船舶観測の強化によって,人工衛星の海面高度計のデータが黒潮流量の良い指標であることが示された。音波を用いて海流を測る方法や海底電線を用いて海岸の間の電位差を測定して海流の流量を評価することも始められた。電気導体である海水が地球磁場の中で運動すると電流が生じるので,津軽海峡,伊豆大島と三宅島,三宅島と八丈島の間で試験されている。将来は島根県浜田市と韓国釜山市,沖縄と台湾,沖縄とルソン島の間の海底ケーブルを利用することにしている。定期的に運航されるフェリーボートや貨物船の船底には音波式流速計を取り付けて500mまでの海流を測定する。音波による生物資源量の評価,海洋における二酸化炭素の収支も取り上げ,文部省予算による国際協同研究計画を実施している。

海洋の観測データは18月以内に海洋データセンターに集めているが,これでは海洋予報には利用できない。気象通報やインターネットを利用してリアルタイムで集めることが話し合われた。日本の近くの海に最初のシステムを作ることになり,日本,中国,韓国,ロシアが協力して世界海洋観測システム北東アジア地域計画(NEAR-G00S)を1996年10月に発足させた。気象庁に集められたデータはインターネットで皆で利用することができる。国際的なGOOSの計画が出来上がり,150の国が協力することになっている。NEAR-GOOSの対象は日本海,東シナ海,黄海であり,これら縁辺海の海洋予報の研究が進められ,国際協同研究計画が提案されている。

NEAR-GOOSについては次のホームページ(英語)で紹介されている。

http://www.unesco.org.ioc/goos/neargoos.htm

 

 

 

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