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5.2 造船量の推移と今後の見通し

 

平成年代(1990年代)に入ってからは,オイルショック前に大量に造られたタンカーの代替需要が出てきて,1988年を底として世界的に造船量が増えています。図54は運輸省の資料による我が国の過去の造船量の実績と21世紀に向けての見通しで,大体2000年をピークとしてタンカーの代替建造を軸とする需要が見込まれています。星印のプロットは1990年以降の実績で,予測を上回っています。(これは見方によっては需要の先取りとも見られ,その反動を警戒する意見もあります)。いずれにせよ,短期的には需要は上向くと見られ,運輸省も設備規制の緩和(運用の弾力化)を96年8月に行って,造船界もようやく明るさを取り戻したといえます。

世界の造船量は長期的に見ると,世界の100GT以上の全船舶約4億GT(現在4億8千万GT)が船齢20年で代替建造されるとすれば,平均して年2,000万GT程度が新造船の需要で,これを中心に海運市況や海上荷動き量により変動すると考えられます。また,海上荷動き量はGNPが1%上昇すると1.5%増えるといわれ,発展途上国の成長や旧ソ連圏の復興を考えると,海運および造船の需要は今後増すことはあっても減ることはなく,その意味で造船業は成熟産業ではあるが,決して衰退産業ではなくむしろ平均的には緩やかな成長産業と言えましょう。

 

5.3 日本のシェアの変遷と今後の見通し

 

図55にオイルショック以降の各国のシェアが示してあります。日本のシェアは,オイルショック後主力としていたタンカーの建造が殆どゼロになったのと,余剰設備や余剰人員を抱えたための生産性の低下のため昭和54年(1978年)には33%と落ち込みましたが,その後企業のスリム化も進み,生産性向上の努力も効果を現して1980年から87年にかけてはバルクキャリアーを主体とするミニブームを迎えて45%から53%まで回復しています。その後プラザ合意後の急激な円高によりコスト競争力を失い,昭和63年(1988年)には37%まで落ち,一方ウオン安と設備投資で勢いに乗った韓国はシェアを29%に伸ばして日本と韓国のシェアが最も接近し,韓国が日本を追い抜く勢いを見せました。しかしその後日本は合理化による生産性の向上を必死に進めて45%台を回復し,一方,韓国はウオン高や賃金の上昇でシェアが伸び悩んで現在23%程度に止まっています。また西欧諸国は1978年頃から急速にシェアを落としましたが,87年頃から盛り返し18%程度を保っています。今後韓国は盛り返すことでしょうし,中国も長い日で見れば確実に伸びて来るでしょう。この中にあって,我が国が来世紀に亘って現在程度のシェアを保って,造船世界一の座を保持できるかどうかは,勿論今後の努力に

 

 

 

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