は じ め に
本邦は四面海に囲まれ、また、多くの離島を擁しており、近年の経済発展と共に海上輸送の高速化の要求が高まり、小型・軽量・高出力のガスタービンエンジンを搭載したホバークラフト及び全没水型水中翼船であるジェットフォイルなどの高速船が出現しました。
その後、ホバークラフトの主機関は燃料経済性に優れたディーゼル機関に移り変わった経緯がありますが、ジェットフォイルの方は、高速性、居住性、船酔いに対する乗り心地等、航行上の優れた特性を有していることからいろんな航路へ定着し、普及してきました。
特に、波による影響が少なく、高速性と定時性の面等から、歴史的にも約20年に及ぶ運行実績があり、また、その特性を生かした新しい航路の開拓等により、現在は10航路、17隻のジェットフォイルの就航を見るに至っております。
国内におけるジェットフォイルの検査は、船体検査が歴年ベースで行われ、主機関としてのガスタービンエンジンの検査は運航(翼走)時間ベースで行われているため、両者の検査間隔は合致せず、船体の年次検査のほかにガスタービンエンジンだけの検査のために余分の運休を余儀なくされているのが実情であります。ガスタービンエンジンの信頼性と運行の安全性が確保されれば、両者の検査間隔を合致させることが可能になってくるものと期待されます。
そこで、ジェットフォイルに使用されているガスタービンエンジンの整備については、新たに考え直す時期に至っているものとして、広く国内外における整備状況の実態を調査して、資料を収集し、整備資料の充実とその活用を図るべく今回の調査研究を行うこととなりました。
今回は、「ジェットフォイル用ガスタービンエンジン」に限定して調査を行いましたが、将来の環境問題を含め、環境に優しい小型・軽量・高出力のガスタービンエンジンの船舶への普及が益々進んで行くものと思われますので、今回の調査研究の成果もそのための第一歩として活用されると共に評価していただきたいと願っています。