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なお、いかだ膨脹用に使用する炭酸ガスはドライアイスの生成を防ぐため水分が少なく、純度の高いものが必要で、JIS-K-1106に定められている液化炭酸ガスの2種又は3種を使用することになっている。

JIS-K-1106液化炭酸ガス

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(2) 窒素ガス

ソ連、北欧、北米等では炭酸ガスに窒素ガスを混合充填しているが、これは寒冷時の膨脹に際しボンベ内圧を約2倍に高め、気重内圧の初期上昇をよくし、膨脹を促進する効果があるためである。

窒素ガスは空気の組成の約75%を占め、残りは酸素である。窒素ガスは分子量28.02で無色無息無味の毒性のないガスであり、密度は空気を1とすると0.9673で空気よりやゝ軽い。大気圧下で液化が起こる温度は約-196℃で酸素の-183℃に比し若干低い。窒素は安全な中性ガスとして単独利用されるほか、硝酸、シアン等の形で肥料や工業用に広い用途があり、また、液体窒素は冷却用に利用される。

いかだボンベに窒素ガスを混入する場合、充填比の関係もあり、ボンベの強度上混合比は重量で3〜6%が限度のようである。-30℃でボンベ内の炭酸ガスが気室に噴出すると、全量の約50%が細粉状のドライアイスとなり、内30%は直ちに気化するが約20%は固体のまゝ気室内に累積されたまま残る。従って気室の膨脹は約80%で一時中断し、その後は外界の熱でドライアイスが徐々に気化するにつれて長時間を要して膨脹する。そのため-30℃で完全膨脹させるには炭酸ガス量を従来より40%以上増量して140%としておけば、直ちに気化するガス量が計算上100%となるわけである。増量は40%以上多いほど効果があるが、ボンベの大きいものが必要となり、重量増加を招くので限度がある。充填比を極力1.5に近づけた時、窒素の混入量は約3%となる。窒素ガスは炭酸ガスの様に固形化しないので、この3%は炭酸ガスの5%に匹敵するが、分子量の差で重量は約1.5g軽くなる。

窒素混入ガスは臨界点以下では気液共存状態の炭酸ガスの気液双方にそれぞれ約10%づつ溶解しているが、臨界点以上では炭酸ガスと窒素ガスとの混合ガス状態であり、窒素混入分だけ圧力は増加し、炭酸ガスだけの場合と同様に温度に比例して内圧は直線的に上昇している。

いかだは船舶救命設備規則により-30℃から+65℃の範囲で使用できるものでなければならないと決められており、炭酸ガスの膨脹が遅い低温時のために、上記のごとく炭酸ガスを40%以上増量し、さらに窒素ガスを約3%混入しているので、当然高温時にはガス過剰となり、内圧が上昇し気室の破裂を招く恐れがあり54年10月製造の甲種いかだから、ボンベから直接膨張される気室に安全弁を装備することとなった。

 

 

 

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