後に上昇し、90年には中国、タイが1,000ドルラインを突破、94年にはインドネシア、フイリピンが1,00Oドルレベルに迫ろうとする状況を呈している。
アジアNIESが4小龍に限られる時代は80年で幕を閉じ、シンガポールが先進国入りする一方で、マレーシアがアジアNIESの一角を占める局面も生まれている。日本、中国を含めた東アジア太平洋地域の経済はNAFTA、EUと並んで世界経済を3分するまでの地歩を築きあげるまでになったのである。経済体質の先行きを示す貿易の面では、対米では黒字を示し、その商品構成では90年代に入ると一次産品を工業製品が上回るまでの変化を示すようになってきている。95年には、世界貿易で17.5%が東アジアとなり、輸出では18.3%となっていることも記憶に止めなければならないであろう。
こうした驚異の工業化の進展によって、従来からの資源依存のあり方も変化をみている、人的資源でも一部の国では労働力過剰から労働力不足への基調変化がみられるし、ここで取上げている水資源でも農業用水一辺倒から工業用水・発電用水へのシフトが始まる一方、工業化に伴なう都市化や経済発展に伴う所得生活水準の上昇を反映した生活用水の増加などの現象もかなり顕著になってきている。また、高まる水需要の増大による資源の価値の増大から、自然放流への一方的依存でない、計画的な水量調整につながるダム建設などのいわゆる水資源開発政策の必要性の増大が生じてきているのである。
工業化が先行した日本の状態からはじめて順次、東南アジア諸国の工業用水事情をみていくことにしよう。
2 各国の水事情
1) 日本の工業用水
経済復興が一応のメドをつけ、高度経済成長が開始されようとする1950年代はいうまでもなく、1960年代に入って工業のシェアが農業のシェアを大きく追抜いた時点にあっても、日本の水使用量はいぜんとして農業用水中心であった。工業が、生