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建設、4)地下水利用、5)農民に揚水ポンプの使用を奨励するための低利融資の拡大、燃料の低価供給、などのための灌漑対策予算を増加させた。その結果、水利組織や行政による水管理の必要が比較的少ない、揚水ポンプを利用した乾期稲作の作付面積が拡大し、灌漑面積率も95/96年度には19.2%(稲だけに限ってみると、約30%)にまで上昇した(表6)。しかし、96/97年度には、ポンプの燃料であるディーゼル・オイルの供給不足によリポンプ灌漑の面積が減少し、灌漑面積率は16.4%に低下する見込みである。

ミャンマーにおける稲作の中心は、エヤワジ、ベグー、ヤンゴン管区の下ビルマデルタ地帯であり、これらの地域だけで米の作付面積の約6割を占める。これらデルタ地帯においては、メコン・デルタ同様一元的な水管理システムは存在せず、しかもメコン・デルタのような縦横に張り巡らされた水路網もいまだ整備されていない。稲作の形態は、主として天水に依存した雨期作であるが、河口に比較的近く、潮汐の影響で雨期と乾期の水位差が小さいためポンプ灌漑により適していることから、先述したように、近年では河川や水路からの個人による揚水ポンプを利用した乾期作も一時増加したが、96/97年度は、減少に転じた見込みである。これは、政府による米の管理政策により、米の国内価格が国際価格に比べてかなり低く設定されているため、ディーゼル・オイルなど投入要素の政府による低価供給が不十分である場合には、米より灌漑水を必要としない豆類などの方が収益性が高いためであると考えられる。また、雨期の洪水や余剰水を排水したり、乾期に満潮時の河川表流水(淡水)を貯水し、灌漑用水として利用するための水門の建設なども、政府によって実施されているが、稲作への影響はいまだ定かでない。

このように、ミャンマーにおける下ビルマデルタ地帯におけるコミュニティーによるものも含めた公的灌漑。排水システムの整備は、ごく一部の例外的事例を除いていまだ手つかず、というのが現況である。

 

 

 

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