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うに、農地の新規開拓の余地が極めて限られてきているだけに、生産拡大に対する強い制約が存在する、と言わざるを得ない。注5)

これに対して、ミャンマーの場合、稲作セクターは70年代から80年代前半にかけての高収量品種の導入・普及期に一時的に顕著な発展を遂げた後、80年代中頃から1991/92年度にいたるまで停滞してきた(表3)。その主たる要因は、灌漑面積が増加せず新技術の普及が一巡したこと、外貨不足から輸入化学肥料の供給量を増加させられなかったこと、軍事政権による米の低価強制供出制度・二重価格制度および暗黙の計画栽培制度などが農民の生産増大意欲を阻害したこと、によるものと考えられる。しかしながら、92/93年度には、前年度における政府による新開地の開発、灌漑施設の建設、農民によるポンプ灌漑への投資により乾期作付け面積が増加し、政府による肥料供給量が増加されたこともあり、94/95,年度までの3年間は米の大幅増産と輸出の増加とを達成した。95/96年度以降は、天候不良、肥料価格の値上げ、ポンプ稼働のために必要なdiesel oilの供給不足、などの要因により、再び減少に転じている。

ミャンマーの場合、ベトナム同様、1989年にそれまでの「ビルマ式社会主義」を放棄し、市場経済化を押し進めようとしているのであるが、そのテンポは、ベトナムに比べて遅いと云わざるを得ない。92/93年度から94/95年度までの米の大増産は、自由化により農民の生産意欲が刺激されたことによるというよりは、政府による灌漑インフラ改善や農業投入財の供給増といった増産指導に負うところが大きい。注6)とはいえ、ミャンマーの潜在的米生産能力に対する評価は高く、a)肥料価格が1990-2000年の間に50%引き下げられ、その後、生産物・要素価格比が維持される、b)米価は今後、年1%の率で上昇する、c)肥料投入量は年4%で増加、d)灌漑面積は年率2%で拡大する、等々の比較的楽観的な仮定のもとで予測すると、2020年におけるミャンマーの輸出余力は560万トンに達するという推計もある。注7)この数字は、多少楽観的に過ぎるとも考えられるが、稲作については100万ヘクタール前後の未開墾地面積が存在する、といわれていることを考慮すると、政策さえ適切であれば強ち不可能とは言えない数字である。

このように、中・長期的に見て、従来の2大米輸出国の供給余力の維持・拡大に

 

 

 

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