事実、ファルケンマークの基準が正しければ、アフガニスタンの東側のアジアはまったく心配することはないだろう。モンゴル、カザフスタン、ウズベキスタンでさえも全体的には比較的水が豊富である。この地域の一部の国は規模が大きいため、国単位以下のレベルでも見る必要がある。そうすると確かに深刻な水不足に悩まされている重要な局地的地域が数多く発見される。たとえば、慢性的な水不足により工業および農業生産の被害の予測は、中国では山西省、山東省、河北省の大部分や、南東海岸地域に沿った盆地の経済発展の目覚ましい一部の地域などで高く、さらに増加する傾向にある。しかし、それらの地域において経済成長は継続しており、山西省以外は中国でもっとも繁栄している地域である。
水ストレスを考えるもう一つの興味深い方法は、ファルケンマーク基準ほどの簡潔で正確さはないが、オーストラリアの水の交換可能な財産権の確立を検討するために、1981年にアラン・ランダールによって最初に発表された成熟する水経済の概念がある9。
表4が示すように、水経済は「成熟段階」にはいると、「拡大段階」とは異なった条件と規則に従って活動していく。拡大段階では、たとえ資本と配水費はかなり高額となったとしても、他方からの要求されていない水源が利用できるため、経済学用語での意味は「機会費用」はゼロである。政府自体も「拡大段階」であり、まだその程度の費用は、その政府が頻繁に支出する高額の補助金で十分にカバーできる。そのコストの大部分は原初設備に組み込まれ、国内の建設予算に吸収されることが多い。そのために修復、復旧、取り替えの時が来るまでこの暗黙の補助金は見逃されやすい。利用する各セクター(農業、工業、家庭)ごとに別々の水源から独自の水供給系を開発する傾向にある。その水源は先使用権しているものであるが、水は究極的には公的なものであるという理由からたいていの水利権システムは水利権を他者、特に他のセクターに販売することは許されていないのが普通である。
成熟段階は全般的な水需要の増加、補助金の増加に対する政府予算の引き締め、老朽化および不十分な保全によるプロジェクトの劣化、環境、漁業、リクリエーションなどの新しい水利用の認可、あるいは帯水層からの過剰な水の汲み上げや、汚染に起因する既存の水源の劣化など、数多くある要因のいずれかによりもたらされる。水の