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? プロペラ回転数を調整しながら模型船速度を計測台車速度に同調させる。

? 模型船速度が計測台車速度に同調した時点で 20 秒間の計測を行う。

? 水槽端までの余裕がある場合は、計測台車速度を変更して?から?を繰り返して新たな計測を行う。

今回の計測では、波長条件 3.0 m から 11.0 m(λ/L〜0.545〜2.000)までの範囲について、計 27 回の計測を行った。模型船速度については、実船の巡航速度 17 kn に相当する 1.386 m/s(Fn=0.1802)を中心として計測を行い、1.168 m/s(実船 15 kn 相当、Fn=0.1590)及び 1.012 m/s(同 13 kn、0.1378)の速度についても計測を実施した。また、波長 6.0 m の条件については、船速 1.096 m/s(実船 14 kn 相当、Fn=0.1484)及び 1.246 m/s(同 16 kn、0.1696)についてもそれぞれ1点づつ計測を行った。波高については、冬季ベーリング海における平均波高 4.07 m に相当する、93 mm の波高を実験対象とした。ただし、造波機に対する波高設定値と実際の波高の間には多少の差異があり、短波長領域では低めの、長波長領域については高めの波高の波浪条件となっている。波浪中における実験条件を表 3.1 にまとめる。

 

3.2 考察

(a) 波浪中における運動特性

図 3.2 (a) に波浪中における水槽実験結果から heaving の計測結果をまとめる。また、図 3.2 (b) にこれに対応するストリップ法による計算結果を示す。図中、ZA及びζAは、それぞれ、heaving 振幅及び半波高である。なお、試験結果の詳細は表 3.3 に示す。波長の変化に対する heaving の挙動は、実験結果と計算結果ともに同様の傾向を示し、λ/Lpp=1近傍において振幅が低減する。ただし、計算ではこの領域がフルード数により変化するのに対し、実験結果では、波長の条件が計算ほど細かくないことにもより、この傾向は明瞭には認められない。しかしながら、heaving の卓越する長波長領域では実験結果と計算結果との一致は良い。

波浪中を航行する船舶には縦曲げ、剪断力等の外力が加わるが、波形勾配の厳しい波浪条件下ではスラミングにより船首部に大きな衝撃力が発生する可能性があることが知られている。特に本船のような砕氷船首を有する船舶にあっては、船首部のフレア角が低いことから船底のスラミングには至らない場合であってもフレアスラミングによる波浪荷重が懸念される。このため水槽実験において計測された heaving 及び pitching より船首部 FP における船体の上下運動の速度νFPを求めた。ただし、各実験において発生した波高は必ずしも一定ではなく実験毎に多少異なることから、目標波高 93 mm(実波高 4.07 m)と実験時の実際の波高との比により計算結果を修正した。図 3.3にνFPと船速Vとの比を無次元波長の関数として示す。図には、船首部の上下運動速度はλ/Lpp=1近傍においてピークをとり、その値は船速の5%程度に達するが、この程度の運動速度では船体構造強度上問題となるような衝撃的な動水圧の発生の可能性は低いと考えられる。

(b) 波浪中におけるスラスト増加

波浪中の推進性能を議論する場合の最も一般的な量は、波浪中における抵抗あるいはスラスト増加量である。このため、波浪中の試験に先立って、平水中の自航試験を行い、波浪中におけるスラスト増加分の計算の基準となる平水中のデータを求めた(図 3.1)。な

 

 

 

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