3.5 まとめ
NSR において最大載荷重量を有する砕氷型バルクキャリアの開発結果について報告した。今回開発した50000DWT型砕氷バルクキャリアは、これまでに実施された最適砕氷商船船型の思想を受け継ぎ、喫水を最大12.5mまで取れる北側のルートに対応できる船型として開発されたもので、今後の具体的なニーズに対応する場合のベース船型となり得るものである。
開発に際しては氷中性能だけではなく、開水中での推進性能の改善にも配慮した。NSRを利用する船舶の場合でも、日本と欧州間の貿易を考えるとほぼ半分の距離は氷の影響の無い開水域を航行することになり、決して軽視することは出来ない性能である。砕氷型船首形状の船舶はバルバスバウを有する通常の船舶に比べて推進性能上不利となるが、このような砕氷型商船の開水中性能についてのデータは我国では建造実績もほとんど無いため、非常に少ない状況である。今回の基本計画段階でも本船の性能推定上苦労した点である。今回水槽実験を通して得られたデータはその意味では今後非常に有用なデータと言えよう。砕氷性能については初期推定砕氷能力と実験により確認した砕氷能力はほぼ一致し、これまでの研究の成果の有用性が再確認される結果となった。
また、開発した船型について日本ー欧州間での概略経済性評価を実施したが、結果はスエズ運河経由の場合とほぼ同等という結果になった。しかしながら、氷況の考え方、その船速との関係もこれまでに入手した文献等のデータを基に非常に粗く設定したもので、より客観的な評価のためには現在INSROP, BOX-Bで開発を進めている、詳細な氷況データに基づく総合的なシミュレーションの結果を待つ必要があろう。
しかし、今回の検討結果からも、比較の対象となるスエズ運河経由場合のフレートのオーダーの把握が出来たこと、また、航海日数、NSR通行費用、船価がどのようなオーダーで影響するのかという点が把握できたことは今後の詳細検討を進める上での一つの指標になったと考えられる。