3.3.6 氷中試験結果及び考察
(1) 氷中抵抗
抵抗試験の様子を写真3.3.4に示す。停止時の割れパターンを写真3.3.5、3.3.6に示す。開水路幅はほぼ船幅に近い大きさとなっており、船首のチャインの影響と考えられる。平成7年度事業報告書(参考文献1)の氷中抵抗の項で考察されているように、開水路幅がほぼ船幅と等しいのでクラックの総延長lCRが比較的短くなり、氷板の破壊抵抗成分を小さくする効果があると考えられる。船速の違いによる砕氷片の大きさの違いは明瞭ではない。抵抗試験結果を図3.3.2及び図3.3.3に示す。氷中のフルード数:Frは次式(3.3.1)で定義したものを用いた。
図3.3.3は抵抗の無次元値で、平成7年度の試験で得られたDd船型の抵抗値も併せて示す。本船はDd船型に比べて抵抗値は若干大きくなっている。これは、本船の長さと喫水が大きいために、氷と船体の間の摩擦抵抗の増加及び氷を船底まで沈めるための浮力抵抗の増加が原因であると考えられる。また、本船は基本的な設計方針として、Dd船型を拡大して設計しているが、喫水が比較的深いため、船幅方向の拡大率が1.25倍であるのに対し、喫水方向の拡大率は1.56倍となる。したがってそのまま拡大すると、肋骨線形状が立つ傾向となり、特に喫水線位置のSpread Angle(γ)がDd船型より大きくなるので、砕氷抵抗が増加すると予想された。そこで第2章で述べた様にγが極力Dd船型に近づける様に最適化を行った。しかしながら、船型全体のバランスから図3.2.15に示すように9 1/2より後半でDd船型よりγが大きくならざるを得ない結果となった。ゆえに氷中では肩部の抵抗が増加したため、全抵抗が若干大きくなったと考えられるが、その大きさはごく僅かであり、最適化の効果により砕氷抵抗の増加を最小限に抑えることができた。回帰式は以下の様になった。値としては、Dd船型(2.48+3.10Fr)のlineの少し上に位置する。
ここに、Rは砕氷抵抗、ρは水槽水の密度、Bは船幅、hiは氷厚である。
図3.3.4に有効馬力曲線を示す。有効馬力:EHPは以下の式(3.3.2)により算出した。
ここに、Vmは模型船の船速、λは模型船の縮率(43.64)である。
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