以上のように、コンテナ貨物は最も物流需要が高まると予測されるが、コンテナ船の特性である、高速航海、定期運航の観点からすれば、氷海航行でのエスコート砕氷船の速力の影響が大きく、必ずしもNSRのメリットを活かせる船種とは言えない。一方、バルクキャリヤーは現状の運航速力と氷海速力の格差がコンテナ船に比べ少なく、予測される物流需要も比較的高い。
ここでは、日本−ヨーロッパの物流需要と、航海日数短縮によるSuez経由航路に対する経済性向上の可能性から、船種としてバルクキャリヤーを対象とする。
3.2.2 航路の設定及び状況の把握
(1)想定する航路
平成5年度の研究では、北極海沿岸の港湾を寄港しながら航行する船舶として、港湾の制限等から喫水8mの浅喫水船が計画された。現在Suez経由で東アジア〜ヨーロッパ間を直行するバルクキャリヤーとしては少なくともPanamaxクラス以上の船型が導入されると考えられる。このクラスの船型は図3.2.3に示すようにDWTの差に対する航海速力の差が小さく、DWTの大きい船型ほど効率的な貨物輸送が行える。SUEZ経由航路に対抗するためにはNSRでもPANAMAXクラス以上の船型を導入する必要があると考えられ、喫水制限の緩和が必要である。そこで今年度はNSRの中でも北よりの航路を選定することにする。 Hamburgからスカンジナビア半島を回ってバレンツ海へ、Novaya Zemlyaの北端を回ってカラ海へ、Vil'kitskogoStraitを通ってラプテフ海へ、Sannikova Straitを通って東シベリア海へ、Bering Straitを通ってベーリング海、オホーツク海を経て日本に至る航路を想定する。図3.2.4に想定航路を、表3.2.4に各区間の航海距離を示す。航海距離は沿岸航路よりも300〜400NM短縮される。なお、本航路の最も浅い喫水はSannikova Straitの13mであり、計画船の喫水制限は12.5mとした。