7.2 甲板上機器類の着氷防止対策
着氷の防止は、なによりも波しぶきを発生させない配慮が必要であるが、荒天海域を航行する必要のある船舶は、甲板上の機器類について、
?波しぶきの付着しにくい配置の工夫。
?付着しても着氷に至らない熱エネルギーの利用。
?しぶきが付着しにくい素材を用いた構造。
等の配慮が必要であろう。
船内に留まる着氷量は、「波しぶきの量」と「環境」に左右されるので、人為的にコントロールすることは困難となる。しかし、甲板上機器類の機能を確保するためには、極力機器そのものへの着氷を防止する必要がある。また逆に、氷が剥離しやすい素材に積極的に着氷させ、風によって剥ぎ取るビニールシート方式も一つの方法であろう。ただこの場合、筺体と可動体が接触している個所には不向きであることと、定期的に氷を船外へ捨てることが必要であることの制約を受ける。
また、ヒートパイプ、温水循環、その他熱放出型の対策は、設備投資、運用コストを考えると船全体を対象として採用することは難しいが、局所への対応策としては有効と考えられる。
いずれにしろ、様々な防止策に対し、その対策の技術的な効果、耐久性、経済性などのトータルな検討と技術の向上が望まれる。
このような状況を踏まえ、第6章で論じてきた各機器への対応策として必要な技術を要約すると、次のごとくとなる。
「開発必要技術」
?はっ水性(難着氷性)塗料の開発
?はっ水性油脂(グリス)の開発
?はっ水性(難着氷性)素材の開発
?406EPIRBの着氷防止技術の開発
?面状ヒーティング装置の開発
?難着氷性電線被覆材の開発
?耐衝撃性碍子の開発
?ヒータ入り空中線の開発
?低温可動型自動離脱器の開発
「具備すべき機能特性」
?対象物の素材に対する親和性;金属、プラスチック、繊維、塗料等
?低コスト性;イニシアルコスト、ランニングコスト、耐久性等
?耐天候性;耐温度性、耐紫外線、耐オゾン性、耐塩分性等
?無公害性;環境保全性、人畜無害等
?作業の簡易性;素人でも作業可能等
この中でも、機器の使命の重要性や対策方法として応用の幅の広い点から優先的に開発する必要があるものとして、次のものを提案したい。