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(3) 中国の環境基準

 

我が国はユーラシア大陸の東側に位置している。近年、中国の経済発展がめざましく、中国国内だけの環境問題だけにとどまらず、大気や海水を通じての我が国への影響も十分予測される。

従ってここでは中国の環境基準等について概観する。

 

?環境行政組織の特徴

1984年12月国務院に国家環境保護局が設立された。同局は、国務院直属の機関として、環境保護に関する国家の総合管理部門を担当すると同時に、国務院環境保護委員会(1984年5月発足)の執行機関として、委員会の事務部門を所管している。各地方では、国の体制に合わせた形で組織化されており、国レベル、省レベル、県レベルにそれぞれ環境保護局が設置され、その下に必要とされる附属機関が置かれ実務を担当している。国(上部)からの指導、指示などは、これらの組織を通じて体系的に行われる。

 

?環境保全の法体系と規制上の特徴

水質の環境基準としては、湖沼・河川等の水について、その水の使用目的等に基づき5種に分類し、要件として、色、臭い、味、濁り、PH、硫酸塩、塩化物、硝酸塩、リン、重金属、シアン化合物、フェノール等の濃度、COD等について規準を設定している。日本では一律に定められている有害物質(鉛、クロム等)について日本の基準と比較すると、中国は日本と同程度か水域によっては日本よりも厳しいものとなっている。しかし生活環境項目として日本で定められているCOD、全リン等に関しては日本よりも甘いものとなっている(表 7-16)。

工業廃水の排出基準については、排出基準を越えた排水に対しては罰金が徴収されるように成っている。その他、PH、色、浮遊物、BOD、COD、石油類等の油分、フェノール等の有機物質、銅、亜鉛等の金属について、地区別に第2類汚染物最高許容排出濃度が規定されている。

 

?中国の水域の汚染の現状

中国の急激な経済成長は、水環境に排出される汚染物質の量を増大させ、深刻な水質汚染を引き起こしている。現在、中国の水質汚染の最大の発生源は産業排水であり、その多くは有害な化学物質や重金属を含んでいる。現在経済成長に比して産業排水の排出量はわずかに減少している。これは第7次環境保護5ヵ年計画に基づいて、公害防止投資を増やして産業排水の処理率を高めたからである。しかし現在汚染対策がとられているのは、大工場に限られている。その理由としては資金不足とエネルギー、水不足があげられている。公害防止施設の操業にはエネルギーと水が必要であり、そうした資源はどうしても生産用にまわされるため、公害防止施設用にまわせないのである。現在、中国ではそうした実状にあった公害防止技術の独自開発に力を入れている。

中国でも生活系排水による水質汚染が深刻なものに成りつつある。生活系排水による汚染の対策は下水道をはじめとする大規模な社会基盤の整備が必要で、そのためには巨額の公共投資を必要とする。また水源の保全、土地利用規制、各家庭での汚染防止のためのインセンティブの組み込み、個人の環境問題の認識の程度などのいわゆる総合的・制度的対策が不可欠である。しかしこれらの対策には大幅な遅れが見られる。生活系の排水による汚染はより悪化する方向に向かっていると思われる。

また富栄養化の問題も深刻なものとなっている。山東省にある4つの湖からなる大湖沼である南四湖では、湖水の全窒素レベルは年平均で3.4mg/L、全リンレベルは0.2mg/Lであり、日本の非常に汚染された湖である霞ヶ浦と比べて、約3倍の値である。このため多くの都市では、湖沼を水道の水源として利用することが困難になりつつあるなどの影響が出始めている。この対策として栄養塩をあらかじめ補足する等の技術的な対応や水源地の保護といったようなソフト的な対応、北京市の密雲貯水池の保護規則のように「総合管理」に乗り出すなどの対策を行っている。

 

 

 

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