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(2) 各国・地域の環境規制の概要

 

◇アメリカ

連邦の水質清浄法(The Clean Water Act)に基づき、環境保護庁が具体的規制内容を政省令の形で定める。各州は州内の実状に応じ更に詳細な規制を定め実施する。また特定の業種については連邦レベルで排出基準が既設、新設の別に定められている。

ある地域に立地する場合、放流先が公共用水域か公共下水道かによって異なるが、いずれにしても排出許可を得る必要がある。公共用水域の場合この許可を得ることは手続き的にも大変であり時間も相当かかる。許可は汚染の現状調査ともいうべきベースラインスタディに基づき適用すべき排出基準が決められるということで行われるのが一般的であり、排水と雨水とは別々の許可となるのが特徴的である。許可までに申請後6〜18ヵ月を要している。下水道放流の場合は排出基準の確認で済むことから、手続き期間は3〜9ヵ月と公共用水域の場合の半分程度となる。なお地下放流という日本にない方法が認められている。

 

◇ ECとヨーロッパ諸国

ヨーロッパの場合ECの規制と各国の規制の両方を考えておく必要があり、相互の関係は複雑である。ECは加盟各国で構成される経済統合体であり、各国間の自由貿易を目指すことから始まっている。国別の環境規制の差はある意味で貿易障壁になるおそれがあることから、共通の規制を目指しているものであり強制力の強い指令(Directive)として出されるものが多い。指令の場合は各国はこれに基づく国内規制の設定を要するが、実際上はこれが遅れるケースが多く、EC委員会から相当数の指令不履行に関する告発が欧州裁判所に持ち込まれている。

ECの環境規制は国の場合と違って総括的な規制システムはなく、個別の規制を数多く出す形となっている。水質関係では環境基準、排出基準が定められており、項目は塩素系有害化学物質等が中心で日本で言う生活環境項目に関するものは今回の調査範囲内では見あたらなかった。指令では「危険物質の水中投棄に関する指令」、「地下水保護に関する指令」が重要である。

 

EC主要国の水質規制の特徴的な点は以下の通りである。

 

?ドイツ

連邦法は枠組みを規定しているのみで、具体的には各州法による。排出行為は事前に当局の許可または同意を要し、一定規模以上の排出者は許可条件の監視や状況報告を行う水質代理人を雇用する義務を負う。

 

?フランス

有害危険物質を排出する特定施設に対し、必要により環境アセスメントを作成して排出許可の申請が求められる。許可を受けたものは規制値を遵守するとともに、国と県の監査を受ける。また水質汚染税を支払わねばならない。

 

 

 

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