日本財団 図書館


参考資料3 APEC 海洋資源保全作業部会報告の抜粋(原文;英語)

 

1. 背景

 

APECは、多様な海産資源を持つ沿岸かつ群島に位置する国々からなる経済機構である。これらの国にとって、海産資源は地域の経済生産の重要な部分を占めている。ほとんどの国ではこれまで、野放し漁業や養殖漁業の資源の探究や開発を急速に進めてきたが、それに伴って沿岸部における人口は急増し、また沿岸地域や沿岸近くの海水は汚染されその水質は変化しつつある。沿岸地域でのこうした影響は、海岸や養殖用の池で頻繁に見られる死んで腐敗した魚や子えびの光景や、有毒な魚や貝を食べたことによって病気になったり死んでしまう人間の増加に端的に表れている。「赤潮」と呼ばれる自然現象は、現在すべてのAPEC加盟国に衝撃を与えている深刻でかつ拡大しつつある問題である。

 

1.1 赤潮と有害な藻の発生

 

「赤潮」という言葉は、時に大量の極微な藻の発生によって海水が変色することを表す。赤潮の「発生」は、藻から作られる毒素や小さな生物の大量発生によって、さまざまな悪影響をもたらす。けれども「赤潮」という言葉は、海水が変色していない場合にも毒素が発生していることが多くあることから、誤解を招きかねない。(毒素を持つ藻が数的には少なかったとしても、それらが害を及ぼすのに十分なほど強力な毒素を含有していることがある。)毒素を持たない藻の発生もまた、ひれやえらなどへ身体的器官に害を与えたり、バイオマスが間接的に酸素欠乏や生息地変化などを生じさせる原因となる。HAB(有毒な藻の発生)現象の影響によって、野放し漁業や養殖漁業の魚や貝は大量死し、汚染された魚や貝を食べた人間は病気に陥ったり死に至ったりし、海に住む哺乳類や水鳥、他の動物も死に至り、また海面からの透過光の減少や過度の繁茂、魚や他の海の生物の生命の歴史の過程に悪影響を及ぼしたことなどによって、海の生息地や栄養構造が変化した。このように、「有害な藻の発生」はさまざまな悪影響をもたらし、また原因となる生物も複雑であることから(原因となるいくつかの生物は毒素を持ち、いくつかの生物は毒素を持たない)、HAB と略される「有害な藻の発生」という言葉は、頻繁に「赤潮」という言葉の代わりに使用される。このレポートではこの2つの言葉を同義語として取り扱う。

赤潮現象にはさまざまな形態がある。一つの主な形態は、毒素を持つ植物プランクトンがハマグリやムール貝、カキ、ホタテのような貝の食物として海水からろ過される時に起こる。毒素を持つ植物プランクトンを食べた貝には藻の毒素が蓄積され、それがそれらの貝を食べる人間や他の生物を死に至らせる。これらの中毒症候群は、麻痺性貝中毒(PSP)、下痢性貝中毒(DSP)、神経中毒性貝中毒(NSP)と名付けられている。藻が原因の新しく撹乱的な貝中毒は、健忘症貝中毒(ASP)である。これは、貝に含まれている ASP 毒素を食べると、永久的な記憶喪失に陥ることからそう呼ばれている。ASPを除いた上述のすべての中毒症候群は、渦鞭毛藻と呼ばれる海水藻類によって合成された生物毒素が原因となっている。ASPはつい最近

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION