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参考資料2 二枚貝を毒化させる有害プランクトンに関する資料

 

◇二枚貝を毒化させる有毒プランクトンの研究(南西海区水産研究所 赤潮環境研究部)◇

 

広島湾のカキが毒化した!

瀬戸内海域における増養殖業による総生産額は平成2年度には約1000億円に達し、カキを主体にした貝類養殖はそのほぼ4分の1を占めています。平成5年度で見ると広島県のカキ生産量は、約2万5000tで、全国生産量の約67%を占めており貝類養殖の益々の発展が期待されているところです。

そのような中、平成4年春のことでしたが、規制地を大幅に上回る麻痺性貝毒がカキで検出され、出荷禁止の事態に陥った事件はまだ記憶に新しいかと思われます。同時に広島と山口の両県のアサリにも規制値を超える値が検出されたために、採捕及出荷が禁止されました。瀬戸内海域における麻痺性貝毒の発生は、和歌山県の田辺湾や徳島県の橋湾・椿泊湾といった紀伊水道沿岸域と播磨灘南部沿岸域等の一部の海域に限られていました。そのため、西日本においてはそれまで貝毒に対する関心は比較的低かったわけですが、監視体制の強化にともなって日本海側や九州海域でもヒオウギガイ、アサリやイガイ等にも次々と毒化事例が報告され、西日本海域への麻痺性貝毒の拡大が懸念されています。

 

貝類の毒化とは?

その原因は?

貝類の毒化は、中毒症状によって、?.下痢性貝毒、?.麻痺性貝毒、?.神経性貝毒、?.記憶喪失性貝毒-等と呼ばれています。これらの中で、現在、日本では麻痺性貝毒と下痢性貝毒の2つが知られています。西日本各地で問題となっている貝毒は麻痺性貝毒です。この麻痺性貝毒とは、サキシトキシンやゴニオトキシンと呼ばれる神経毒による複合毒であり、その症状の特徴は唇や手足の疲れです。貝類に蓄積された毒の量が多い場合には、アサリで数10個、ホタテ貝で数個食べれば死に至る可能性があります。

さて、昨年には、「第7回有毒プランクトン国際会議」が仙台市で開催され、有毒プランクトンの分類や生態等の生物学的研究、毒の構造や分析方法等の化学的研究、さらには薬理・毒性学にいたる最新の研究成果が報告され、活発な討論と研究交流が行われました。これは、有毒プランクトンによる魚貝類の毒化や大量死などの現象が、世界的に深刻かつ重要な問題となっていることの反映とも言えます。事実、近年における貝毒の発生海域は、北米及び北ヨーロッパ沿岸はもとより東南アジアやオーストラリアの東海岸等、世界各地に拡がる傾向を示しています。また、その原因となる有毒プランクトンも数多くの種が報告されています。

貝毒とその原因となる代表的な有毒プランクトンを表7-1に示しました。日本沿岸における麻痺性貝毒の主な原因プランクトンは、渦鞭毛藻 Alexandrium tamarenseや A.catenellaであり、また下痢性貝毒の主な原因プランクトンは、渦鞭毛藻 のDinophysis fortiiやD.acuminataです。アサリやカキ等の2枚貝が貝の体内に蓄

 

 

 

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