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○ 生態系への影響、生態系・生物の多様性保全、海洋における物質循環

複雑で難しい生態系をモニター(研究モニタリング)してデータ収集を行うには、多角的な切り口で行っていく必要がある。一つの手法を用いて数人が担当するだけで複雑な生態系の構造や海洋の物質循環の把握はできない。高度なモニタリング技術を開発し、組織的かつ効率的なモニタリングを行っていく必要がある。

「海の生態系」と言っても多様な生態系があり、河川・湖沼、内湾、外洋、深海、といろいろなものがある。水質汚染物質が流入した場合、海洋の生態系を評価するのは容易なことではない。水中に生息する生物、生物の動態、生態系を通じた食物網が基礎にあるためである。微生物から始まって、それを捕食する原生生物、動物関係、一方では光合成を利用して増殖する植物プランクトン、それぞれのレベルや相互関係についてわからない点は多い。海の生態系知見なくして環境保全対策技術を利用できないと言っても過言ではない。生態系・物質循環に関する課題・手法の関係(図6-3)において「問題の解明」に含まれる課題についても、研究および技術開発は、生態系の構造や生態系を通じた物質循環についての知見に大きく依存しているといえる。

生物・生態系への環境影響評価も、最終的には物質の挙動を追跡することになると考えられ、そのためには、

・食物連鎖の最下層に位置する微生物群集

・微生物を捕食する原生動物、動物プランクトン

・食物連鎖の上層に位置する高次消費者

・貝や底性生物の生物濃縮を用いたバンキング

などそれぞれのレベルの物質の移動を総合的にモニターし継続的に情報を収集する必要がある。

 

 

 

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