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(3) 赤潮を引き起こすプランクトン

赤潮を形成する植物プランクトンの数は極めて少なく、世界中でわずか 50 種ほどである。日本近海に限れば、赤潮を引き起こすのは主に次表 5-4 の5種類である。

 

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このうちシャットネラとギムノディニウムによる被害が多く、近年まで両属の被害を合わせると 90 % に達していた。ところが、1980年代後半からヘテロカプサによる二枚貝(アサリ、カキ、アコヤガイなど)の被害が記録されてきた。

 

(4) 群集生態学的アプローチ

プランクトンの種類によって、赤潮の発生メカニズムが異なる。赤潮プランクトンの生活環に関する知見や増殖動態についての生理生態学的知見の蓄積により、研究も群集生態学的アプローチに変わってきている。例えば、シャットネラとギムノディニウムが同時に大量増殖しないこと、シャットネラと珪藻は競合関係にあり、シャットネラは増殖速度では珪藻に勝てない性質があること(表5-5)なども明らかになってきた。

 

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春は珪藻に栄養を奪われるので、シャットは増殖が抑えられる。しかし珪藻は、光がないと生きられない、上下の動きが小さい、という弱点があるため、自らの増殖によって栄養塩の不足を招く。一方、シャットは鞭毛で動き回ることができるため、珪藻が繁茂している時は下の方で細々と過ごし、珪藻が貧弱になるのを見計らって分裂を促進させるのである(図5-12)。

 

 

 

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