内分泌撹乱物質(環境ホルモン)によるオスのビテロゲニン形成についての生物学的意義は、まだ良く分かっていない。オスのニジマスでのビテロゲニン形成が高いと、精巣重量が減少し、精子も少なくなることが実験的に示されている。また、ビテロゲニンの過剰形成によると見られる腎臓障害で死んだニジマスも見いだされている。
(4) 今後の課題
まず、上のビテロゲニンアッセイを普及拡大していくことが肝要である。そのためには、測定法の標準化が必要であり、測定種の検討やビテロゲニン抗体作成などの研究基盤整備は不可欠である。現在までに、ビテロゲニンに対する多くのポリクローナル抗体が作られているが、極めて種特異性が高い。相同領域に対するペプチド抗体の開発も進められており、ユニバーサル抗体が待たれている状況にある。
また、ヒトへの影響を考える際には、女性ホルモン様化学物質の作用機構の解明も重要な課題である。生化学的手法、分子生物学的手法、あるいは構造生物学的手法を駆使して、女性ホルモン受容体との作用機構や細胞内信号伝達経路の解明が望まれている(表5-2)。