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5 重要課題の対策手法例

 

5.1 流出油による海洋環境汚染問題

 

1997年1月の日本海におけるナホトカ号からの重油流出事故を契機に、大規模油流出事故対応への関心が高まっている。

当財団では、かねてよりこのような事態に対する危惧の念とその対策についての強い関心を抱いており、日本財団の補助事業「大規模油流出事故対応の防除技術・資機材の研究開発」をはじめ、いくつかの調査・研究を行って来ている。平成9年7月にはこれらの事業について総合的に取りまとめた「大規模油流出事故の初期対応に関する調査研究(まとめ)」報告書を作成した。

これまでの事業の主なものとしては、海上に流出した油は、風化によって粘度、密度などの性状が変化し、防除に重大な影響を与えるため、風化現象について研究し、その成果を「海上流出原油の風化について(蒸発・乳化と物性の変化)-原油風化試験結果の理論解析とその応用-」報告書としてとりまとめた。

また、油流出事故発生の初期における油の汚染範囲などを推定するための、海上流出油拡散漂流シミュレーションプログラムの開発を現在も継続して行っている。

さらに、流出油処理に関し、将来有望なバイオレメディエーションについて、実用化試験及び流出油処理効果シミュレーションを実施して、安全性、処理効果などを確認することを目的とした、「海洋微生物による流出油処理に関する調査研究」を平成7年度から3カ年計画で取り組んでいる。

 

冬季の日本海を想定した大規模油流出事故の防除体制の強化方針については、運輸技術審議会において審議され、1997年11月に報告書が出されている。その中で、流出油による海洋環境汚染問題に関する対策手法の研究開発の強化について、実行可能と考えられる次の開発事項の推進が提言されている。

 

○ 流出油の漂流予測と防除処置に関するシミュレーターの開発

分油流出事故の対策指揮者に対応の指針を与えるシミュレーターの開発が求められている。このようなシミュレータは散処理剤の使用の判断などで単に事故発生時に役立つだけでなく、対応訓練、資機材の整備や動員計画の策定にも大きな効果を発揮すると期待される。

○ 微生物による自然浄化の促進に関する研究の追跡と問題点の洗い出し

微生物による浄化の促進効果や肥料の有毒性についての評価は必ずしも確定しておらず、精密な実験・試験を重ね、公正な評価が得られるようにすることが求められる。

○ 分散処理剤の処理効果と生物に対する影響の調査研究

現在までに、ほとんど無害の分散処理剤が開発されている。今後は、分散処理剤で処理された流出油の性状と浄化過程、および生物に対する影響について調査研究が求められる。

 

 

 

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