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<二酸化炭素循環における海洋の役割>

 

?海洋は二酸化炭素を吸収・放出する

海洋における炭素存在比は大気におけるそれの約50倍もあり(図 2-9)、海洋は炭素循環のなかで大量の二酸化炭素を吸収もするが放出もしている。大気に過剰放出された二酸化炭素の吸収に直接関与しているのは、海洋の表層部であり、そこでの二酸化炭素の存在比は1〜3倍に過ぎない。そこには、溶解ポンプ、生物ポンプ、アルカリポンプがあり、さらに表層部と中深層部は海洋の大循環で結ばれている。

 

?溶解ポンプは低温、荒海でよく働く

二酸化炭素は水に溶け込むことのできる気体であるが、その溶け込む度合いは、大気と水に含まれる二酸化炭素の分圧と、温度、そして風や波などの海面の状態に依存する。低温で、波が荒く大気と海水表面をよく混合する海域では、二酸化炭素の吸収力が比較的大きくなる。これを溶解ポンプというが、海水に溶け込んだ二酸化炭素は、次にアルカリポンプや生物ポンプ、海洋の循環の力を借りて表層部から中深層部へと固定されていく。

 

?アルカリポンプには炭酸イオンが重要

海水中の二酸化炭素(CO2)は、炭酸イオン(CO32-)と水(H2O)を使って、炭酸水素イオン(HCO3-)の形で固定される。これがアルカリポンプである。つまり、アルカリポンプの能力は炭酸イオンの存在量に依存する。よく、サンゴは石灰質を形成するので二酸化炭素固定に役立つのではないかという提案があるが、石灰質を形成するためには、炭酸イオンが必要となり、これはアルカリポンプの立場から見れば、その働きを阻害することになるので注意が必要である。また、アルカリポンプの反応は pH やアルカリ度、海水濃度などにも依存する。

 

?生物ポンプには栄養塩(リン、窒素、鉄)が必要

海水中には藻類などの植物プランクトンが存在する。地球の大気中には当初、酸素は存在しなかったが、現在ある大気中の酸素の大部分は彼らが作り出したものである。植物プランクトンは二酸化炭素と水から太陽光エネルギーを用いて、光合成を行い、有機物を生成する。その有機物の一部はバクテリアによって分解され二酸化炭素が放出されるが、大部分は動物の栄養分になったり、海底へ沈降したりして、炭素循環の中で、二酸化炭素以外の形で固定化されることになる。この植物プランクトンの活動には、光がよく当たる海域であることが望ましいが、水温はさして大きな因子ではない。最も重要なのは、リン(P)、窒素(N)、鉄(Fe)である。

 

 

 

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