3.2 Nb3Sn永久電流スイッチの開発
従来の多くの永久電流スイッチには取り扱いの容易なNbTi超電導線が用いられていたが、超電導線のマトリクスをCuNiとしオフの抵抗を大きくしたものでは、オンで高電流を通電する場合に不安定性の問題が残されていた。このため、ヤマト1号に搭載した永久電流スイッチでは、NbTi超電導線を用いた永久電流スイッチ素子を並列に複数個接続することにより、総合的な安定性を保つという対策を取ってきた。しかし、複数個の素子を並列に配置した永久電流スイッチでは形状・質量が大きくなること、さらに素子間の電流バランスを確保するため有限抵抗を組み込む処置が必要なこと、などの欠点があった。このような問題点を解決し、10kA級の通電に対し単一素子で安定性を確保できる永久電流スイッチの実現を目的として、Nb3Sn超電導線を採用した永久電流スイッチの開発を進めることとなった。
開発の第1ステップとして平成7年度に、Nb3Sn永久電流スイッチの安定性の検討およびオン・オフ動作の計算機シミュレーションを行うと共に、オンの通電容量1000A級のスイッチを製作し各種試験を実施した。その結果、静的特性および動的特性共に、十分に満足できる性能を確認することができた。
開発の第2ステップとして平成8年度に、オンの通電容量3000A級のNb3Sn永久電流スイッチについて、オン・オフ動作の計算機シミュレーションを行い、7本撚りのNb3Sn超電導線を採用して永久電流スイッチを製作した。その結果、静的特性および振動周波数5〜33Hz全振幅1mmの加振などの動的特性共に、設計性能を満足するものであり、Nb3Sn永久電流スイッチの大容量化への見通しを得ることができた。ただし、高振動周波数180〜400Hz目標加速度0.4km/s2の過大加振試験においてはクエンチを発生した。
以上のような開発の経緯を踏まえ、今年度は3000A級Nb3Sn永久電流スイッチの限界電流の測定、耐振性調査のための改造と加振試験、および10kA級Nb3Sn永久電流スイッチの概念設計などを行った。
3.2.1 3000A級Nb3Sn永久電流スイッチの改造と性能試験
平成8年度に試作した3000A級Nb3Sn永久電流スイッチに対し、今年度はリード部の通電容量増加および耐振性強化のため図1に示すような改造を行い、性能試験を行った。
1) 改造と性能試験の順序
(1) リード部へのNbTi超電導線の追加