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2.5 炭化水素によるNO選択還元反応

 

これまでに述べたとおり、種々の燃焼装置から発生するNOxの低減には触媒を用いた排煙脱硝が重要な役割を果たしている。例えばガソリン車のNOx排出量は三元触媒によって未対策時の10%以下にまで低減されている。しかし、CO2排出量の削減、あるいは低燃費化の立場から希薄燃焼方式ガソリンエンジン(リーンバーンガソリンエンジン)の使用が急務とされている。一方、ディーゼル車の場合、エンジンの改良によりNOx排出量は約40%にまで低減されているものの、目標の規制値にはまだ到達していない。リーンバーンガソリンエンジンあるいはディーゼルエンジンに適応できるNOx除去触媒を開発する上で最も問題となるのは、排ガス中の未利用酸素である。すなわち、酸素共存下では現在の三元触媒が全く活性を示さず、一方、NOの直接分解触媒は酸素による活性阻害を受ける。NH3を用いる選択還元法は原理的には適用可能であるが、高価で危険なNH3を車載することは現実には不可能である。

これに対し、反応ガス中に炭化水素と酸素が共存すると、選択的なNOの還元が進むことが近年報告され、新しいNO除去プロセスとしてその実用化が期待されている。以下に、この炭化水素によるNOの選択還元反応について概説する。

 

2.5.1 炭化水素によるNO選択還元反応

 

前章に述べたCu-ZSM-5によるNOの接触分解反応を以前から検討していた岩本らは、種々の共存ガスの影響を調べる過程で炭化水素と酸素が共存するとNOの還元が選択的に進行することを発見した[33、34、35]。(図2-13)またほぼ同時期にHeldらもリーンバーンエンジンの排ガスに相当する酸化雰囲気条件で図2-14に示すように空気過剰率λ=1.3の酸素過剰条件下で約45%のNOx除去を達成したと報告した[36]。これらはCu/ZSM-5によるNOx直接分解反応研究に基づいた結果であり、それ以降Cuイオン交換したゼオライトを中心にかなり研究が行われている。

炭化水素の効果については、当初NO分解反応を阻害する吸着酸素を表面金属から取り除くことにあり、NOの転化自体は分解反応(2NO→N2+O2)に基づく

 

 

 

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