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り再酸化された表面V5+=O種であると考えられた。つまりV5++=V4+のredox 機構がV2O5上で起こっているということである。Inomataら[30]は、これらV2O5での結果に加え、IRでは触媒表面上の吸着物質としてはNH3以外に観察できないことから、Rideal-Eley型の反応機構(図 2-11)を提案している。まずNH3がV5+=Oに隣接したOH基にNH4+(ad)として強く吸着する。気相NOがNH4+(ad)と反応してN2、H2O、V-OHを生成する。生成されたV-OHは気相O2またはbulkのV5+=Oにより再酸化される。

これに対して、Takagiら[31]はV2O5/Al2O3上でのIRの結果(図 2-12)[32]より、NOが反応性の高いNO2を経て還元されるという機構を提案している。

NO + 1/2 O2 → NO2(ad)           (2-8)

OHs + NH3 → Os-NH4+(ad)          (2-9) 

Os-NH4+(ad) + NO2(ad) → N2 + 2 H2O + Os  (2-10)

Os + H2O → 2 OHs             (2-11)

NOがO2によりNO2(ad)になってV2O5/Al2O3上に吸着する。またNH3がNH4+(ad)として吸着する。NO2(ad)とNH4+(ad)が反応してN2とH2Oを生成し、OHsが再生される。

以上はV2O5系触媒についての機構である。

これまではV2O5系触媒が唯一の触媒として用いられてきたが、最近ではゼオライトを用いるプロセスも実用化されている。しかしいずれのプロセスにおいてもNH3がO2よりもNOと選択的に反応する性能を利用している点では変わりがない。しかしNH3による還元では、毒物でかつ高価なNH3を使用することから、設備費、運転費が高い上に、未反応NH3の排出が厳密に規制されているという問題を抱えている。そこで現在省エネルギーシステムとして開発されているコージェネレーションシステムには適用しにくい。従って従来のNH3-SCRにかわる新しいNOx除去技術の開発が必要であり、分解等によりNH3を間接的に生成する還元剤を用いる方法や他の接触還元法が有望視されている。

 

 

 

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