日本財団 図書館


ところで、従来の三元触媒は、リーンバーンエンジンには適用できなかった。リーンバーンエンジンは、燃料が希薄な条件下で燃焼させることにより、エンジンの熱効率を向上させ、燃費が良くなるというメリットをもつ。しかし、リーンバーンエンジンの空燃比は19〜22であり、通常のエンジンの理論空燃比14.7よりかなり大きい。従って従来の三元触媒では、CO、HCは浄化できてもNOxの浄化は望めない。そこでエンジン本体からのNOxの排出量を抑えなければならない。そのためには、NOxの排出量が規制値をクリアできる22〜24の空燃比を使用せざるをえなくなる。この空燃比は燃焼可能な限界の領域であり、燃焼が不安定になりやすい。その結果、車のパワーは低下する。

しかし、最近になって一部のメーカーでリーンバーン(希薄燃焼)用三元触媒が実用化され、実際にそのエンジンを搭載した自動車が発売されている[23]。希薄燃焼用触媒は、従来の三元触媒と違い、希薄燃焼領域でもNOxの浄化が可能である。従って燃費が最も良くなる19〜22の空燃比での運転が可能となる(図2-6)。さらに排出ガス量が増加する加速時にも理論空燃比に切り替える必要はなく、希薄燃焼のままでの運転が可能になる。

希薄燃焼用三元触媒でもメーカーにより、タイプは異なっている。トヨタの場合、NOx吸蔵還元型触媒である[24]。基本的には従来の三元触媒と同じ浄化性能をもつ。従ってNOxを浄化できる空燃比は従来と同様に理論空燃比付近である。希薄燃焼領域で発生するNOxは触媒のNOx吸蔵物質(バリウム系の物質)に一時吸蔵しておくのである(図 2-7)。そして運転条件の変化によって供給空燃比が理論空燃比付近に切り替えられた時点を利用して還元する。マツダの場合、Pt-Ir-Rh/ゼオライト三元触媒であり、基材の一部に特殊なゼオライトが用いられている。また反応を促進する活性貴金属として、従来の三元触媒に用いられているPtとRhのほかにIrが新たに加えられている(図 2-8)。ゼオライトの細孔に入ったHCは、活性貴金属に吸着したNOxを還元し、排ガス中のO2とは反応しない。COとO2は活性貴金属表面上で完全燃焼し、CO2となる。つまり、HC、CO、NOxのすべてが浄化できる。

このように希薄燃焼用三元触媒の実用化により、さらなる燃費の向上や、従来は無理とされてきたより大きな排気量のエンジンの希薄燃焼化への取り組みが進められると考えられる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION