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[2]ノルウェー

 

ノルウェーは、人口約440万人の国であり、海運、石油、水産を主力産業とする国であるが、その特徴が、この国の海事関連の研究開発にも色濃く反映されている。

海事関係に従事する労働人口は約7万人であり、同じく研究開発には約360人(man-yearベース)が携わっているが、人口が少ないなかで産学官がうまく連携し、非常に効率的に研究開発を行っているということが、大きな特徴の1つである。

 

○プロジェクト・コーディネータ:ノルウェー研究審議会

官の代表は、ノルウェー研究審議会(Norwegian Research Council)である。この組織は海事分野だけでなく、国内産業の発展のための研究開発を支援することを目的として作られた独立性の強い組織である(半政府機関と表現する人もいる)。産学の主要な機関には、研究審議会から人材が派遣されており、コミュニケーションが密に取れるような体制を作っている。

研究審議会の主な役割は、産業振興に寄与するプロジェクトを立ち上げ、コーディネートするとともに、適切な予算配分をすることである。基本的に配分される資金は補助金の形を取るが、補助率は50%を超えることもある。

また、プロジェクト開始後は、プロジェクト幹事委員会や評価委員会を組織し、プロジェクトが円滑に推進するように運営する。

図5-2-9は、ここ10年ほどの間に実施された大きなプロジェクトの例である。現在、走っている大きなプロジェクトは「Ship Operation & Ship Technology(最先端の情報・通信技術の運航システム等への適用)」「Green Shipping(環境に優しい船舶関連技術及びソフトウェアの開発)」「Short Sea Shipping(沿岸海上輸送ロジスティクスの開発)」の3つであるが、これらを含め、さらに効率的なプロジェクト管理を行うため、1996年より図5-2-10に示すような「MARITIM」プログラムが動き出している。4つの大きな研究開発領域(水上輸送/ロジスティクス、船舶の運航、造船及び船舶技術、舶用機器及びシステム)の中で、いくつかのサブプログラムが存在し、それぞれが有機的に関係しながら自由度の高い研究開発を進めようとしている。

 

○人材輩出の源:ノルウェー科学技術大学

学の代表は、ノルウェー科学技術大学(NTNU、旧ノルウェー工科大学)である。海事関係に携わる理工系の要人は、ほとんどがこの大学出身であり、そのネットワークの強さは注目される。産学官の共同プロジェクトが比較的容易に、しかも早く立ち上がるのは、この人脈が貢献しているともいわれる。

 

○先端的な応用技術開発の拠点:MARINTEK

NTNUと産業との架け橋の役割を果たしているSINTEFグループの中で、海事分野の先端

 

 

 

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