後退航行を容易に行うことができる。
このエンジンに関する研究開発の話がHUTに最初に持ち込まれたのは1985年であるが、HUTとしては要請に応じて、例えば次のような研究開発を行った。
・プロペラに対する氷負荷の解析
・構造設計
・マルチプロペラのコンセプトに関する研究
・流体力学的視点からの最適形状
・シミュレーションやモデル試験による流体力学設計のサポート
以上の成果等を踏まえて、80年代末には砕氷船等に設置されたが、その後、発電機とモータを分離したことにより、発電機の設置場所等に対するフレキシビリティが増すことにより、スペース効率が高まることが判明したため、客船等にも適用できるとして、90年代に入ってその可能性についての研究開発を実施した。
現在は販売段階に入っているが、販売にあたってDeltamarin(後述)というコンサルティング会社にマーケティングを依頼し、さらにABBとKvaerner Masa-Yards は、共同出資してABB-Azipod(出資比率はABBが50%、Kvaerner Masa-Yards が25%)という販売子会社を設立した。
特筆すべきは、1つは大学でAzipodの研究をしていた複数の学生が、そのままテーマを引き継いで、Kvaerner Masa-Yards及びABB-Azipodに就職したということである。フィンランドの大学では、産業に役立つ人材を送り出すという意識が非常に強く、この例のように学生の時に企業との共同研究開発に積極的に関与させ、そのままそのテーマを持って企業に就職するというケースが多い。
もう一つは、Deltamarin のマーケティングの方法が非常にユニークであることだが、これについてはDeltamarin の項で詳述する。
(b)「SeaTech Finland」Research Program
「SeaTech Finland」は、1996年に開始され、1999年まで続くプロジェクトで、主に新しい造船技術を開発することを目的としている。出資しているのは、Kvaerner Masa-Yards、Finnyards、及びTEKESである。
これに先だって実施された「Shipyard 2000」では、4年間で約4億円が投入されたが、このうちの約4割をTEKES、残りを民間が拠出した。前述したように、MIFが実施しているテーマの中には、Shipyard 2000の一環で実施され、SeaTech Finland に引き継がれたものがある。
このような産業共同プロジェクトでは、運営委員会に大学研究者も参加するが、基本的には産業側が主体となって進めていく。
なお、MIFと日本との共同研究開発の事例としては、「船舶やオフショア構造物における氷負荷(船舶技術研究所)」及び「氷海域での船舶の運航性能(北大・北川教授)」等がある。