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[1]フィンランド

 

フィンランドは人口約510万人であり、ノルウェーとほぼ同規模である。産業的には電子・機械系を主体として進展しているが、特に最近では通信機器のノキアの急成長が有名であり、周辺産業が拡大しつつある。

海事関係では、海運よりも造船、舶用機器産業が強く、国や大学の共同研究の仕組みや制度を活用して、新技術の開発を行っている。海事関係の研究者数は150人程度と非常に少ないため、効率的かつ商品化を重視した産学官連携の研究開発あるいは商品開発が行われていることが特徴である。

 

○プロジェクト・コーディネータ:技術開発センター(TEKES)

技術開発センター(Technology Development Center:通称 TEKES)は、産業振興のための技術開発をサポートする政府機関であるが、大規模な研究開発プロジェクトの企画立案・運営のほか、基礎的な研究や個別企業の技術開発にも資金的なサポートを行うことがある。なお、企業から技術開発の要望が出される場合は、開発部門ではなくマーケティング部門からテーマが出てくるのが一般的ということであり、その辺が日本とは大きく異なるところである。

 

○産業界の新技術開発の支援機関:フィンランド技術研究センター(VTT)

フィンランド技術研究センター(Technical Research Center of Finland:通称 VTT)は、フィンランドの産業における新技術開発をサポートすることを目的とした半官半民の研究開発機関である。海事関係の研究開発は、VTTの9つの研究所の1つ、VTT生産技術研究所で行われている。

VTTは、上記のTEKESからの資金で実施される研究開発に必ず関与するほか、企業の商品開発の下請的な実験を受託するケースも多い。

VTTの各部門には、必ず産業界とのパイプ役を務めるコーディネータが配置されており、産業界のニーズを常に把握するように努力している点は注目される。

 

○産学官共同研究のバーチャルセンター:フィンランド海事研究所(MIF)

フィンランド海事研究所(Maritime Institute of Finland:MIF)は、ヘルシンキ工科大学(HUT)とVTTが共同出資して作った機関で、従業員のいないバーチャルな研究開発機関である。

企業がMIFを通して研究開発を実施する場合は、HUTとVTTから適切な研究者が選ばれ、プロジェクトチームが作られる。従って、企業は基礎的研究の成果(HUT)を商品化(VTT)するまでの一貫した研究開発を行うことができる。

 

○新技術の商品化コーディネータ:Deltamarin

フィンランドでは、特に海事関係の新技術を商品化する時に、Deltamarin のようなコンサルティング会社が重要な役割を果たしている。例えば、機器メーカや造船所で新しい技術が開発された時に、コンサルティング会社は自社に蓄積されている豊富なデータを活用し、

 

 

 

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