[2]各国の研究開発の特徴
(1)研究開発のタイプ
前項で述べたように、計8ヶ国の造船技術の研究開発の現状の概要についてとりまとめたが、これらの国々における造船業の現状の位置付けとの関連で研究開発のタイプを分類すると、次の3つになると考えられる。
?北欧タイプ
かつて繁栄した造船業は衰退し、新造船受注量等の世界シェアは1%にも満たないが、その造船業を支えてきた海運業、舶用工業、エンジニアリング、コンサルタントの企業、機関が競争力の高いまま依然として残っており、グローバルに事業展開している。また、造船業もそのような産業的な背景を活かして、高付加価値な船舶で生き残りを図っており、国も全面的にバックアップしている。
体制的な特徴としては、各国とも産学官の間での共同研究開発の中核となっているCOE(Center of Expertise)とも呼ぶべき試験研究機関(どれも大学が主要な出資者となっている独立会社)を持っているということと、それを含めた産学官の共同研究開発をコーディネートする政府機関が存在することである。
イギリスもこのタイプに近いが、北欧3国のように国が積極的に造船業や舶用工業をバックアップしているとは言い難い。
?ドイツタイプ
造船業は世界3位の規模を保っているが、最近ドイツ最大の造船所が倒産し、競争力の低下が懸念されている。もともと機械産業の強い国であり、造船所と機械系の舶用機器メーカが製品差別化のための技術開発を主導し、国はやや将来的な視野に立った技術開発をバックアップするという役割分担である。日本に非常に近いタイプである。
?アメリカタイプ
海軍向けの造船業が日本の造船業と同等の規模であることからもわかるように、技術開発も艦艇用が主体である。ただし、冷戦の終結により、米国造船業は急速に商船向けにシフトしており、政府も積極的な支援を開始している。技術開発の成果はまだ出ていないが、長期債務保証という資金的な支援策が効果をあげつつある。